ウクライナの工作員によるロシア国内での破壊工作はこれが初めてではないが、そのなかでも最も大胆不敵なものだったかもしれない。ロシア空軍は「絶滅危惧種」になりつつあるSu-34をまた1機失った可能性がある。
ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、このSu-34は第21混成航空師団所属のものだとしている。放火した様子とみられる動画を投稿し、「機体からなぜ出火したのか明らかになった」と皮肉っている。
ウクライナの工作員は直近では2022年10月にもロシア北西部プスコフの飛行場に潜入し、カモフKa-52攻撃ヘリコプターを爆破していた。プスコフはウクライナとの国境からおよそ800km離れている。ちなみにチェリャビンスクはウラル山脈の東麓、カザフスタンのすぐ北にある都市だ。
ウクライナが何百kmも離れたロシアの航空基地を攻撃する手段はドローン(無人機)やミサイルなどほかにもあるが、直接の破壊工作はロシアにとって最もばつの悪いものかもしれない。航空基地のセキュリティーはいったいどうなっているのだ? ロシアはいまが戦時中だということも知らないのか?
ウクライナがチェリャビンスク空軍基地やSu-34を攻撃目標に据えた理由は明らかだ。双発複座の超音速機であるSu-34はロシア空軍で最高峰の戦闘爆撃機であり、ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争の1000km近くにおよぶ戦線で、最も活発に行動しているロシア軍機の一つでもあるからだ。
Su-34は連日のように出撃し、射程約40kmの衛星誘導の滑空爆弾をウクライナ軍の陣地に向けて投下している。ウクライナの軍人オレクサンドル・ソロニコは、強力な滑空爆弾はウクライナ軍部隊に「最も大きな恐怖を与えるものの一つ」になっていると述べている。
ウクライナはロシア空軍のSu-34を破壊するためにあらゆる手を尽くしている。先月には、南部で長距離防空システムを機動的に運用して1週間で4機のSu-34を撃墜した。もし今回火をつけられた機体が修復不能なら、戦争拡大前に150機超あったロシア空軍のSu-34は125機ほどに減った可能性がある。
ウクライナの破壊工作作戦は有効だが危険をともなう。これまでにウクライナの破壊工作員が何人も捕まり、殺害されている。最も新しいとみられるケースでは昨年8月、ウクライナと国境を接するロシア南西部ブリャンスク州に密かに越境しようとしたウクライナの工作員チームがロシア軍に制止され、うち2人が殺害されたと伝えられる。
(forbes.com 原文)