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2023.12.25

出島組織からイノベーションを起こす 長崎発「組織のちゃんぽん」とは

変化が激しい現代のビジネス環境のなかで、企業や自治体が新しいことを生み出すため、本体から離れた組織をつくり事業を推進する「出島組織」がいま注目を集めている。

大企業などが組織本体から意思決定や評価制度の面で切り離し、イノベーション拠点とする出島組織は全国的に増えている。出島組織がスタートアップや他大企業などと手を組む流れがあるが、出島組織同士のつながりや、出島組織の運営について知識の共有を行う場はまだ多くない。

そんな組織同士を「ちゃんぽん」することで出島戦略の活性化を図ろうと、11月10日、出島組織サミット実行委員会は長崎市とともに「出島組織サミット」を開催した。2回目の今年は、規模を拡大し、企業や自治体、大学など海外を含む45団体から84人の「出島組織」のメンバーが参加した。それぞれが抱える課題や知見を共有しながら、交流を深めた。

出島メッセ長崎を会場に、長崎市が復元をすすめる出島での歴史を探索する時間も設けられ、江戸時代の出島から出島組織のヒントを発掘する試みも行われた。

 出島組織とそこに集う人々
長崎駅前の施設「出島メッセ長崎」に集合した参加者たち

長崎駅前の施設「出島メッセ長崎」に集合した参加者たち

そもそも出島組織とは、正攻法では解決できない課題が増えるなかで、大企業や自治体などで本体組織からはみだして新しい事業や価値を生み出すためにつくられた部署やチームのことだ。経産省や経団連も推奨している概念であり、本体と離れているために意思決定のスピードが速く、スタートアップや外部の組織と連携しやすいといったメリットがある。

会のはじめに、出島組織サミット実行副委員長の倉成英俊は「出島とは、自由、未来そしてイノベーティブの比喩、象徴です。出島組織という概念には特定の提唱者がいるわけではなく、組織からはみ出して、新しい価値を生んでいるという点を満たす色々な形のチームや組織が全国で生まれています。こうした日本発のコンセプトを根付かせ広めていきたい」と挨拶した。

自らを「はみだしもの」と語る出島組織の人々。全組織の自己紹介の時間には、それぞれが所属する組織の特徴や運営方法、取り組んでいる事業やサービスについて紹介した。

ハウス食品の新規事業担当者の中西誠人はこう語った。「6年間、研究開発所にいました。技術やアセットを持っている大企業なのに、まだまだ生かしきれていないところがある。新規事業でいまはスパイスやスイーツの事業もやっていますが、もっと消費者の生活に寄り添った商品や売り方を打ち出していけるよう、今日はヒントを得て帰りたいと思います」

東京都スタートアップ・国際金融都市推進室の森奈保子は「グローバルのイノベーションカンファレンスやスタートアップ推進事業など、自分たちのやっていることを発表したが、まだまだ知らない人が多く、情報発信力の弱さを実感しました。ここで学びとつながりを得て業務に生かしていきたい」と語った。

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文=田野早希子 写真=松竹利佳

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