出島の歴史を追って見えてきたもの
昼食には長崎の名物・角煮弁当などが供され、参加者同士の話も弾んだ。歴史に思いを馳せながら参加者が向かったのは、江戸時代の生活を再現した部屋や資料などが展示されている出島だ。出島組織が出島の歴史を辿り学ぶための情報が詰め込まれている、本サミットのために作られたオリジナルのガイドマップを手に、それぞれ出島を巡った。このマップにはいくつかの代表的な建物・展示物などにQRコードが紐づけられており、オリジナルの音声ガイドを聞くことができる。ガイドを担当したのは、長崎市出島復元整備室の学芸員山口美由紀だ。
江戸時代に、東インド会社が各国の貿易港とつながって貿易などを行ったことから、出島には当時の最先端の文化が集まり、混じり合い、さらに新しい文化や商品が生まれていった。たとえば砂糖が出島を通して安定的に輸入されるようになったことで、それを各地へ運ぶ道中でその砂糖を使った菓子が土地ごとに誕生した。
様々な文化や人々が所属が別でありながらも、かかわりあい影響を及ぼし合う様子は、出島組織サミットが目指す出島組織同士のあり方そのものだ。
山口は出島にいた貿易商についてこう説明する。「鎖国中ですから、当然出島以外には(祭りのような特別な時以外)外国人は出入りできなかった。窮屈だったはずです。それでも色々な文化や人々との交易が楽しくて仕方ないという人々がそこで暮らし、好奇心や知識欲を持って日本と関わったことで新しい文化が生まれました。まさにいまここに集まっている出島組織のみなさんと同じような動き方をしていたんです」。
活躍する出島組織と、その目指す未来
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では、現代では出島組織は実際にどのような事業に取り組み、成果や価値を生み出しているのだろうか。出島から帰った後には8つの組織が登壇し、事例の共有と意見交換が行われた。大きい組織が継続的に革新を行う事例として、ふくおかフィナンシャルグループ傘下で日本初のデジタルバンクである、みんなの銀行のCXOオフィス中原淳一リーダーは自身の組織をこう表現した。
「場所としてだけでなく、さらに時間的にも出島組織となっています。銀行は堅い商売のため、社内での人事や組織に関しても新しくトライすることは本当に難しい。けれども、未来のことを考えたら改革をしていくことは必須です。そうした時に、みんなの銀行がデジタルに関することだけでなく、人事制度などの新しいことを試していくんです。つまり、時間軸でみた未来の場所=「出島」になっている。みんなの銀行でうまく機能したものは、本体(ふくおかフィナンシャルグループ)にも応用して実装していく」