ウクライナのミハイロ・フェドロウ副首相兼デジタル移行相も「あらゆる装備を電子戦によって保護していかなくはならない」と10月に表明している。わが軍の兵士がいるすべての塹壕、すべての地点を、敵のドローンの飛行に使われている周波数帯を解析する電子戦によって保護していく必要がある。これは非常に大きな組織的な取り組みであり、現代技術戦の新たなドクトリンでもある」
作戦に際してまず電波妨害を行うというウクライナ軍のやり方が奏功しているらしいことが初めてわかったのは、この夏の終わりごろだった。ウクライナの海兵隊によるドニプロ川左岸(東岸)への渡河作戦に向けて、ウクライナ軍部隊はロシア側の支配下にある左岸で電波妨害による準備を整えた。
ウクライナ軍の電子戦部隊と砲兵部隊、ドローン運用部隊は、ロシア軍の電波妨害装置を破壊し、ロシア側のドローンを運用不能にした。その後、海兵部隊が小型ボートで渡河し、左岸沿いの集落クリンキを攻撃することに成功した。数カ月後の現在も、ウクライナ側はクリンキ上空を支配し、海兵部隊はそのおかげで、この集落に築いた細い橋頭堡を保持できている。
クリンキとアウジーイウカでのウクライナの成果には、重大な含意がある。それは、ウクライナ軍が新たな勝ち方を見いだしたということだ。
ウクライナ軍が今後、この勝ち方を続け、ほかの場所にも広げていけるかどうかは、外国の援助によるところが大きいだろう。ウクライナ軍が使用している電波妨害装置の多くは米国から供与されており、直近では9月に提供された6億ドル(約850億円)の支援パッケージに含まれていた。
だが、米国からの支援はいまや風前の灯火だ。ジョー・バイデン米大統領は610億ドル(約8兆6000億円)の新たな対ウクライナ支援を提案しているが、米議会のロシア寄りの共和党員らは難民が米国で保護を申請する権利の実質的な廃止を条件にし、成立のめどは立っていない。
(forbes.com 原文)