ただ、テプリンスキーの軍集団は上意下達がうまくいってないようだ。第104師団のある兵士はソーシャルメディアで広く共有された手紙で「下っ端の者たちと上層部の間に相互理解がない」と訴えている。
ロシア軍部隊がクリンキに向けて手探り状態で進まざるを得ないなかで、ウクライナ側はそれをつぶし続けている。高速のFPV(一人称視点)ドローンや、夜中に動き出す「バーバ・ヤハ」爆撃ドローンが、クリンキにつながる道路などでロシア兵をつけ回す。りゅう弾砲やロケットランチャーは、ヘルソン州のもっと南にいるロシア軍部隊を狙っている。
ウクライナ軍部隊はBM-21で、ドニプロ川の8kmほど南にいるロシア軍部隊を攻撃してきた。今回撃破したT-62はその戦果のひとつだ。運用している米国製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)はさらに射程が長く、川から16kmほど南の目標に撃ち込んだことも確認されている。
クリンキでの戦闘はまだまだ続くだろう。もちろん、ウクライナ軍が弾薬の調達に苦慮しているのは周知のとおりだ。米議会ではロシア寄りの共和党員らがウクライナに対する610億ドル(約8兆9000億円)規模の支援の提供を遅らせている。欧州ではハンガリーの親ロシアのオルバン・ビクトル首相が、欧州連合(EU)によるウクライナ支援に拒否権をちらつかせている。
ドニプロ川左岸のロシア軍部隊は今のところ、ウクライナの海兵隊部隊をクリンキから押し出せていない。ただ、もし海兵らの弾薬が枯渇してしまえば、ロシア側は強く押し込む必要すらなくなるかもしれない。
(forbes.com 原文)