また気候変動は、マラリアの動態にも間接的に大きな影響を及ぼしています。水や土地といった資源をめぐる争いが増えて紛争を煽り、蚊の制御や感染者の治療のプログラムに支障をきたしています。マラリアの重症化と死亡を回避するには迅速な診断と治療が重要なため、医療サービスへのアクセスが減れば、即座に悪影響がもたらされます。マラリアを媒介するステフェンスハマダラカという蚊は都市部で繁殖し、ほとんどの殺虫剤に対して強い耐性をもっていますが、これも気候変動と関係している可能性があります。
気候変動がマラリア、ひいてはグローバルヘルスに与える影響を示すこうした初期の指標を踏まえて、私たちは早急に対応しなければなりません。今行動を起こさなければ、マラリアが劇的に再流行し、過去20年も努力して達成した成果が帳消しになる可能性があります。
ドバイでCOP28が開催中ですが、気候変動への世界的な対応の重要な要素として健康により焦点が当てられるように、この機会をとらえなければなりません。気候変動への公平な対応には、グローバルヘルス、そのなかでも、マラリアに対する緊急行動を含める必要があります。アフリカの農村に住む小さな子どもほど、二酸化炭素の排出と無関係な人はいません。それにもかかわらず、そのような子どもたちほど、生命を脅かすほどの気候変動のリスクにさらされているのです。
気候変動が健康に及ぼす影響に包括的に対応するには、マラリアのような最も気候の影響を受けやすい疾病の脅威を減らすための先制的介入や、気候変動に対する保健システムの強靭性の向上、保健施設やサプライチェーンからの二酸化炭素放出量の削減など、多方面にわたる緊急行動が必要となります。
気候変動が人間の健康にどこで、どのような影響を及ぼすのかについての多くの未解決な問題を解明するには、さらなる研究が必要ですが、すべての答えを待っている時間はありません。行動を起こすのと並行して、理解を深めていかなければなりません。