米国で急増、新型コロナ変異株「ピロラ」について知っておくべきこと

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米国で新型コロナウイルスのオミクロン株の変異株「BA.2.86(通称ピロラ)」が急速に広がっている。米疾病対策センター(CDC)によると米国内の感染者で3番目に多い変異株になった。最新の1価ワクチンはオミクロン株のXBB系統に対応しており、ピロラは系統が異なるが、CDCや製薬会社はピロラやその派生型に対してもある程度の防御効果があると説明している。

CDCの最新の見積もりによると、11月12〜25日の2週間に、米国内の感染者に占めるピロラの割合は8.8%と前の2週間から3倍近くに急増した。ピロラは前の2週間には上位5位にも入っていなかった。

ピロラはとくに米北東部で広がっており、この地域ではオミクロン株のXBB系統の「HV.1」に次いで2番目(13%)に多くなっている。

WHOは「注目すべき変異株」に指定

世界保健機関(WHO)は先週、ピロラを「注目すべき変異株(VOI)」に指定し、8月に指定していた「監視下の変異株(VUM)」から警戒レベルを1段階引き上げた。

米ファイザー・独ビオンテックと米ノババックスはフォーブスの取材に、それぞれの新ワクチンはピロラに対してもある程度の防御効果をもたらすと述べている。米モデルナは9月、最新ワクチンの臨床試験(治験)で、ピロラに対する中和抗体価を8.7倍上昇させることが確認されたと発表していた。

CDCはピロラに関して「公衆衛生リスクは低い」と説明し、ほかの変異株と同様に最新のワクチンで防御を高められる見込みだとも言及している。

専門家の間では、最新ワクチンではピロラや「JN.1」をはじめとするその派生型はあまり防御できないのではないかという見方も一部にある。「bioRxiv(バイオアーカイブ)」に投稿された査読前論文の著者らは、新たなワクチンによってピロラの拡散に拍車がかかる可能性もあるとコメントしている。

CDCによれば、ピロラがほかの変異株と異なる症状を引き起こすのかどうかはわかっていない。ピロラは、2022年の主流株で同年4月には米国で感染者の85%を占めた「BA.2」が高度に変異した株だ。ピロラからさらに変異したJN.1は米国外で急速に広まっている。CDCによると米国では9月に初めて検出され、ほかに11カ国で確認されている。

CDCの集計よれば、米国では11月12〜18日の1週間に1万8119人が新型コロナウイルス感染症で入院し、前の週から約9%増えた。死者数は506人で8.3%の増加だった。

エリスや現在主流のHV.1とは系統が違う

米国では10月下旬に「EG.5(通称エリス)」に代わってHV.1が主流となり、12〜25日の感染者では31.7%を占めた。HV.1は、現在2番目に多いエリスから派生した。いずれもXBB系統であるため、最新ワクチンで防御できる。

HV.1について米コロラド大学医科大学院のロス・ケドル教授(免疫学・微生物学)は、感染力は強いものの、ほかの変異株と比較して「より重篤な症状を引き起こすという証拠はない」と述べている。

ピロラはCDCによる変異株の追跡では11日の発表で初めて単独で表示され、それ以前は感染者に占める割合の低さからほかのBA系統と一括りにされていた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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