モデルナの次期ワクチン、「ピロラ」にも効果 警戒高まる新変異株

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米モデルナは6日、新型コロナウイルスの最新版ワクチンの臨床試験(治験)で、多数の変異があり警戒されている新たな変異株「BA.2.86(通称ピロラ)」に対して「強い免疫反応」が確認されたと発表した。以前の治験では、米国などで急速に広がっている変異株「EG.5(通称エリス)」や「FL.1.5.1(通称フォルナックス)」にも同様の有効な反応が示されている。

モデルナによると、治験の初期データから、ピロラに対する中和抗体を8.7倍増加させることが確認された。ピロラは米国など一部の国で検出されている。

免疫システムによって生み出される中和抗体は、新型コロナウイルスのように体内に侵入してくるウイルスを標的とし、その複製を阻止できる。治験でみられた血中での増加は、感染や重症化に対する防御の程度が上昇することを示唆する。

このワクチンに関する以前のデータでは、エリスやフォルナックスなど現在広まっているほかの複数の変異株についても、8.7〜11倍の中和抗体増加が確認されていた。

米国では晩夏の感染拡大の波が広がっており、政府は秋のワクチン接種推進に向けた準備を進めている。

モデルナのスティーブン・ホーグ社長は今回のデータについて、秋のワクチン接種シーズンを控えるなか、自社の最新版ワクチンが「引き続き重要な防御手段であることが確認された」と述べ、今後も世界中で健康に対する新たな脅威を迅速に評価し、対応していくと強調している。

モデルナは、データは規制当局と共有しており、認可されしだい供給できるよう準備を整えているとしている。

ブースター接種早める国も

新型コロナは人々の関心が薄れてきているが、依然として健康に対する差し迫った危険のひとつである。進化が速いということは既存の防御を素早く回避できるということであり、新たな変異株から身を守るには、インフルエンザのように毎年、最新版のワクチンを接種する必要があるかもしれない。

こうしたブースター(追加)接種が必要になるとはいえ、ワクチン接種によって新型コロナの感染、重症化、死亡のリスクはなお低下している。ワクチン未接種の人は、感染による予後不良や死亡のリスクがはるかに高いことが研究で繰り返し明らかになっている。

新型コロナ流行状況の正確な追跡は難しくなっているものの、ここ数週間、全米で感染者数と入院者数が増えていることがデータで示されている。

専門家はピロラのような新たな変異株の出現と拡大に懸念を示しており、多数の変異を起こしているピロラについては感染拡大の新たな波を引き起こすのではないかと危惧している。英国など一部の国はそれを食い止めようと、ブースター接種計画を前倒しで進めている。

最近の研究によると、新たな接種を受ける場合、前回打ったのと同じ腕に打ったほうが、反対の腕に打つ場合よりも免疫反応が強くなる可能性があるという。ただ、この研究は少数のサンプルに依拠しており、同じ腕への接種が長期的な防御に影響すると確定的には言えない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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