ウクライナ軍に100個程度ある地上戦闘旅団の大半は、戦車を少なくとも数両は保有している。通常は1個戦車中隊もしくは1個戦車大隊が置かれ、前者は戦車を十数両、後者は30両ほど配備される。だが、単一の指揮下に多数の戦車を運用するのは戦車旅団だけだ。
機動的で防護のある火力である戦車を集中的に運用することで、戦車旅団は激しい接近戦で最も有効な旅団になる。
全面侵攻直後の数週間、ロシアの野戦軍が首都キーウに向かって進撃してきた時、ウクライナ軍の第1独立戦車旅団は首都の北およそ100kmにあるチェルニヒウで防御を固めた。そこで、はるかに大規模なロシア軍部隊を撃退した。第1戦車旅団のT-64BV戦車は、ロシア側の戦車との接近戦でとりわけ強力なことを証明してみせた。
しかしその後、戦争は陣地戦の様相を強め、爆発物を積んだドローン(無人機)が飛び交い、大量の地雷が埋設された防御線で大きな突破口を切り開くのに双方とも苦戦するようになった。そうしたなかで、ウクライナ軍の戦車ドクトリンも進化してきた。
戦車はしだいに遠距離で戦うようになる。前線から1.5〜3kmくらい離れた場所から、りゅう弾砲のように高射角で射撃するのだ。「この技法の価値は、戦車が砲に必要な防御や遮蔽のない状態で機動しながら、広い範囲に集中的に砲撃を加えられる点にある」と英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は2022年の研究で喝破している。
精確で迅速な射撃統制システムや有効な105mmライフル砲を備えたレオパルト1A5は、図らずもこうした間接射撃の役割に適している。さらに重要なのは、レオパルト1A5は装甲が薄いという点だ。T-72に比べると半分ほどの厚さしかない。接近戦に向いた防御が不十分なレオパルト1A5は、敵と距離をとって戦うのが望ましいのだ。
第5戦車旅団についても、戦車の大群で敵陣に突撃するといった、劇的な装甲攻撃を近く、あるいはいつか開始すると期待すべきではない。むしろ、T-72やレオパルト1A5、あるいはM1A1などを、間接攻撃向けに少しずつ投入するほうが蓋然性は高いだろう。
(forbes.com 原文)