今後、物理空間、中立空間、サイバー空間の3空間で人々は生きることになると考えています。この中立空間は物理空間とマージできるのも特徴となるでしょう。私が所属する東京大学 生産研究所のインタースペース研究所の一部は、物理空間とサイバー空間がリアルタイム同期する空間になっています。AIは空間認識が弱いのですが、空間型AI(スパーシャルAI)が空間・地形情報を提供する、「スマートスペース」を作ろうとしています。「スマートスペース」の中ではロボットやドローン、バーチャルキャラクターなどのAIが動きやすくなる。現実空間のロボットを動かすためには、AIにとっても中立空間は大事なんです。
さて、この中立空間のデファクトスタンダードを誰が取るのか? まだわからない。そこが面白いところです。メタが取るのかフォートナイトが取るのか? この中立空間は基盤技術が大事であり、ある程度オンラインゲーム運営能力も必要です。」
この中立領域に寄与しそうな動きはIBMの中でもいくつか実験が始まっているようだ。例えば、全米オープンやマスターズのプレイを生成AIが映像をリアルタイム解析して音声解説やドロー分析をする。日本のプロ野球でも物理空間の動きをサイバーに伝達する動きはすでに始まっている。現在はゴルフ場、テニスコートなど限定された物理エリアの中立空間化ではあるが、今後広がって行くことも予想できる。そのような中立空間においてそれぞれのスポーツに特化したエージェントが初心者の人間にも各スポーツの楽しみ方を教えてくれるのであれば、将棋の世界で藤井聡太氏が生まれたように、新たなヒーローヒロインが生まれてくることも想像できる。Apple Vision Proなどの新たなデバイスの登場もそのような世界を加速させるだろう。
中立空間でどのようなサービスを提供したいか? どのような体験をしたいか? 今から考え始めるのも良さそうである。私は早く自分のエージェントが欲しい。自分のエージェントは世界動向にも詳しく、同時に芸術の歴史も学んでいる存在でいて欲しいので、どのようなお願い事をして育てていこうか、と考えるだけでワクワクする。
今回、三宅陽一郎氏と岸本拓磨氏が描いてくれた未来の情景を一緒に作り上げる仲間が増えて行くことを期待してならない。もちろん私も一緒に作り上げていく一人でいたいと考えている。
連載:ポリネーターが見る世界の景色
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