アジア

2023.12.05 09:00

「金」頼みの中国の影響力が限界に、打開策は見つからず

安井克至
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中国の景気がよく、輸出による余剰資金が潤沢だった頃なら、一部の一帯一路参加国や、融資を全額期限内に支払うことができないその他の国の不払いを簡単に補うことができただろう。だが、もはやそんな状況にはない。中国国家統計局によると、中国経済は今年、政府が目標としている実質成長率5%を達成するのにさえ苦戦し、中国の輸出は減少している。さらに、債務問題を抱えているため、中国の金融システムはかつてないほど脆弱(ぜいじゃく)で、一帯一路参加国の債務不履行やその他の海外投資プロジェクトの失敗に耐えられなくなっている。

加えて、中国恒大集団(エバーグランデ)や碧桂園(カントリーガーデン)といった不動産開発企業が経営危機に陥り、中国の金融システムは巨額の疑わしいローンの未払いを抱えている。住宅ローンの借り手は、不動産開発企業が完成させそうにないアパートの前払いのために借りたローンの支払いを拒否している。このような国内の圧力と、一帯一路参加国に共通する財政難のため、海外プロジェクトの資金を拠出していた中国の銀行は融資を拡大するどころではなくなっている。

これらの問題にもまして、地方政府も財政難に陥りつつある。インフラ整備の資金を賄うために借入を行っている地方政府はここ数年、借入を増やしすぎた。この間、新型コロナウイルス感染症の問題があり、その後、中国政府がインフラ支出で経済活動を活性化させようとしたが、失敗に終わった。地方政府の中には、住民への基本的なサービスの提供も難しいほど財政がひっ迫しているところもある。

こうした苦境の打開策はまだ見つかっていないようだ。ロシアに対する中国の義務のようなものの負荷は今後重くなるばかりだろう。海外に積極的に投資し、中東の石油やその他の国から原材料を購入するための、かつて潤沢だった余剰資金がなければ、中国は世界におよぼす影響力という点で、経済的にも財政的にも引き続き限界に直面する。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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