特需終了で失速する中国のネット出前「美団」、海外事業も苦戦中

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中国のフードデリバリー大手、美団(Meituan)の創業者の王興(Wang Xing)の保有資産は、北京を拠点とする同社が消費の低迷と競争の激化の中で苦戦しているため、年初から66億ドル(約9730億円)も減少した。

現在44歳の王は、それでも93億ドルという巨額の資産を維持しているが、香港市場に上場する美団の株価は、第3四半期決算を発表した11月29日に12%急落し、年初来では約50%下落している。

香港の招商証券(China Merchants Securities)のアナリストのトミー・ワンは、コロナ禍を追い風に業績を伸ばした美団のフードデリバリー事業が、需要の減少やマクロ的な逆風に直面していると分析する。

美団も同様の見方を示しており、同社の最高財務責任者(CFO)の陳紹輝は、28日のアナリスト向け電話会議で、2023年最終四半期のデリバリー件数は前年同期比で減少する可能性が高いと述べた。同社はまた、暖冬の影響で消費者がデリバリーに頼らず外食を増やしていると説明した。

さらに、美団は競争の激化にも直面している。短編動画プラットフォームTikTokの中国版のDouyin(抖音)は、フードデリバリーを含むローカルサービスへの進出を開始した。このため、美団もプロモーションの費用の増額を迫られ、利益率が圧迫されている。フードデリバリーを含む美団のローカルコマース事業の第3四半期の営業利益率は、前年の20.1%から17.5%に低下した。

調査会社モーニングスターのカイ・ワンは「美団の経営陣は、人工知能(AI)やライブストリーミングなどを用いて、より大きな需要を喚起しようとしているが、現時点ではあまり効果を出せていない」と語った。

一方、美団を率いる王は中国本土以外に活路を見出し、5月には香港でフードデリバリーの新ブランド「Keeta」を立ち上げた

しかし、一部のアナリストは人件費が高騰する中で、中国よりもデジタル決済の利用率が低い諸国で、美団が国内の成功を再現するのは難しいと考えている。調査会社ブルー・ロータス・キャピタル・アドバイザーズの創業者でCEOのエリック・ウェンは、美団が国際的な足場を築きたいのであれば、競合のフードデリバリーを買収するのが得策だと語る。

美団は、東南アジアにおけるデリバリーヒーローの事業の買収に向けて交渉中と報じられたが、その進捗は発表されていない。「彼らが買収以外の方法で海外に進出するのは非常に難しい」とウェンは述べている。彼はまた、適切な買収ターゲットはそれほど多くはなく、買収額はかなりの高額になるかもしれないと指摘した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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