アジア

2023.11.22 11:00

中国が繰り返す「インフラ整備頼みの景気刺激」の問題点

遠藤宗生

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中国の指導部は、さらなる景気刺激策が必要だと考えている。そのための措置として打ち出したのは予想通り、これまでにも頼ってきたインフラ整備だ。中国政府は、最近開催された中央金融工作会議で、主に洪水被害を受けた地域を支援するプロジェクトの資金を賄うため、1兆元(約21兆円)の新規国債発行を承認したと発表した。このようなインフラ整備への支出は過去に中国経済の成長を促したことがあるが、現状では望むような成果につながるかは極めて不透明だ。

今回の景気刺激策の効果が疑問視される大きな理由のひとつは、直近のインフラ整備で期待された経済効果が全く得られなかったことだ。こうした失敗は、地方政府の危うい財政にはっきりと表れている。地方政府が重荷を背負い込んでいるのは、インフラ計画の資金確保を中央政府が地方政府に押し付けるのが常だからだ。

中央政府は、地方政府のインフラ投資会社である融資平台(LGFV)を通して借り入れを行うよう促している。最近のLGFVからの借り入れは期待通りの経済効果につながらなかったため、地方自治体は現在、巨額の債務超過に陥っている。中には、住民への基本的なサービスの提供も難しいほど財政がひっ迫しているところもある。一部の地方政府は、過去のインフラ整備に伴う債務の返済でLGFVからの新たな借り入れにすでに頼っている。

中国政府は地方の債務問題を受け、久しぶりにインフラ整備の費用を国の借金で賄うことを決定した。この方針は地方政府の財政負担を軽減し、少なくとも負担を増大させることはないかもしれない。だが、これから行うインフラ整備が、地方政府に負債を残すことになったこれまでのインフラ整備よりもいくらかでも大きな経済効果を生み出せるのかという疑問は残る。過去のインフラ整備は地方政府に巨額の借金を残した。仮に、これから行うインフラ整備が経済的効果を生むとしても、中国経済を動かすのに十分かどうかは定かではない。なんといっても、新たなインフラ整備の予算は18兆ドル(約2670兆円)規模の中国経済の1%にも満たない。
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翻訳=溝口慈子

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