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2023.12.06 17:30

海外で大注目、埼玉発「コンニャク製模擬臓器」の意外な使い方と異能の仕掛け人

献体は防腐剤などが豊富に使われているので、硬い。しかし、この模擬臓器のテクスチャー(感触)は柔らかく瑞々しく、生体に近い、というのだ。「ほかにも、何人もの来場者に『ずっと探していたものが見つかった(This is kind of thing I’ve been looking for.)』とか、『これはゲームチェンジャー(物事の状況を一変させるプロダクト)だ』と言われました」。

昨年同社に入社した姫野氏の初ミッションは、先行して発信されていた、日本語による大量のリリース原稿の英訳だった。そもそも「コンニャク」という加工食品は、海外にない。「コンニャクの何たるか」を説明するところから世界に同製品をプレゼンする、という仕事を任されたのだ。

ところが再発信してみると、驚くべき「逆転現象」が起きた。植物由来であることが魅力と取られ、「コンニャクでできているから買う」という購買動機が喚起されたのである。

実は日本国内では、「コンニャク由来」である事実はとりわけ強い関心を集めなかった。前述した「生生しさ」「柔らかさ」「みずみずしさ」「リアリティ」こそがひたすら、魅力として受け容れられたのだ。



だが、海外ではエコであることの価値が日本よりもずっと高い。「弊社の模擬臓器は着色剤以外は食べられちゃいますからね。コンニャクは廃棄もしやすい、究極のエコ素材です」と姫野氏。

また、宗教や主義が実際の行動に影響を与えることも格段に多い。たとえばイスラムの国での医師のトレーニングにはプラスティック系のキットや、実際の人体(cadaver=キャダバー)が使われている。だが、前者はリアリティの面で劣るし、献体はオン・ザ・ジョブ・トレーニングでそうそう何度も使えるものではない。

また、主義上、豚を使いたがらないビーガンやベジタリアンの医師たちの人口も、日本国内に比して圧倒的に多いのだ。

「それこそが、模擬臓器の弊社内での海外シェアが5割にも及んでいる理由ですね」(高山氏)。

コンニャクで「VR」「AR」のシミュレーション教育を超える!

アメリカの医療現場では目下、どんなシミュレーション教育がされているのかというと、「VR、ARが主流」(高山氏)だ。

「VRやARでの手術シミュレーターは、視覚的なリアリティーが抜群だし、ここをまず剥離する、ここを切ると出血する、といった手術の『ストーリー』を学ぶイメージトレーニングには適している。でも感触トレーニングに関しては、電気的負荷をかけてリアルな反発力を再現してはいても、リアル度においてまだまだ不足。弊社のコンニャク由来製品が認知されれば、需要はこの先10年で10倍、20倍にも膨れ上がると思います」と高山氏は言う。



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取材・文=石井 節子 撮影=佐々木 康

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