映像編集ソフトのタイムライン画面が実体化したようなイメージを持つと理解しやすいかもしれない。うご板では「1カット=1タブレット」を実体化し、映像同士のつながりを考えることで既存の映画や映像作品がどのような意図でカット割りを行っているのかを逆算的に思考することができる。
また映像表現の時間的な要素に加えて、空間的(身体的)な要素を考えるよいきっかけにもなるだろう。スマートフォンが十分に普及した現代において「動かせるカメラ/ディスプレイ」が持つ映像表現の可能性を考えることは今を生きる子どもたちにとって至極実際的なことなのかもしれない。
文化祭の準備週間に萩原健一氏とYCAMスタッフが講師となり、「うご板」を用いた映像表現に関する授業を行った。アニメーションの仕組みやカットを繋ぐことでストーリーが生まれることなど初歩的な内容から始まり、うご板を使った撮影、各々が撮影した素材をつなぐアクティビティなど、初めは慣れなかった生徒たちも、徐々にコツを掴んでいき、空間と映像表現の関係性を深く理解していく様子が垣間見れた。
最終的には総数60台のタブレットを使用し、生徒が各々撮影した映像を用いたデジタル壁画を披露した。映像は全てドミノのように数珠繋ぎになっており、文化祭を訪れた保護者らは始まりから終わりまで目で追いながら鑑賞を楽しんだ。
体育祭のオリジナル種目をつくる「スポーツハッカソン for Kids」
2021年、山口市立潟上中学校では、メディア・テクノロジーが組み込まれた道具を使って、体育祭の種目をつくるワークショップ「スポーツハッカソン for Kids」を実施した。このプログラムではYCAMが開発した「YCAMボール」と呼ばれるツールを使用し、スポーツ共創の体験を通じてオリジナル種目の開発、そして実際の体育祭での種目実施を目指した。
「YCAMボール」はスマートフォンを内部に入れることができるビニールボールで、ボールを振るとスマートフォンの加速度センサーが振動を感知し、振ったり動かした回数をモニターに表示する。このシンプルなツールを使って、新しいスポーツをつくる。なんだ簡単じゃないかと思うかもしれない。しかしこれがなかなか難しい。頭だけで考えていても埒が開かないので、誰かと一緒に体を動かしながらつくるしかやりようがないのだ。
カウントを増やすことを得点とするスポーツならば動きが激しいスポーツになり、逆なら静的なスポーツになる。また振ることで数が増えるのか、減るのかのプログラムの設定ひとつでまったく異なるスポーツが生まれる。ましてや体育祭の種目をつくるとなると、競技性、公平性、ひいては見ているお客さんが応援しやすいか、盛り上がるかなど多くのパラメータまで想像力を働かさなければいけない。
スポーツクリエイションを通じて、対話と実践を繰り返し、共創におけるコミュニケーションやルールデザインを学ぶきっかけとなるプログラムだ。