宇宙

2023.12.01 12:30

太陽系「最小」の水星は太陽系「最大の謎」の存在

NASA探査機メッセンジャーのデータを用いて作成した水星の着色画像。表面を構成する岩石の性質の違いを示している。画像中央右上は巨大なカロリス盆地(NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington)

メッセンジャー探査計画の主な要点

米アリゾナ州立大学の宇宙化学者で惑星科学者のラリー・ニトラーは、筆者の取材に応じた電子メールで、水星は酸素が少ない状況で形成されたため、このことが溶解や分離の過程と、マントルや地殻でどのような鉱物が形成される可能性があるかに影響を及ぼしたと説明した。ニトラーによると、水星形成の精密なモデルを作成するには、この2つを的確に説明する必要があり、これまでのところ誰もそれを実行できていない。
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関(ESA)の国際共同水星探査ミッション「BepiColombo(ベピコロンボ)」の探査機が現在、水星に向かっている。ミッションの目的の1つは、水星の内部構造の特徴を明らかにすることだ。水星は、太陽系の他の惑星に比べて鉄の含有率が高い(合計で体積全体の約85%)ことが知られている。

その理由は、まだ誰にもわからないようだ。

水星の大きな鉄の核はどうやって生まれたのか

コンピュータモデルでは、大量の物質を惑星から剥ぎ取った後、その大半を惑星表面に再降着させないようにするのは困難であることが明らかになっていると、ニトラーは指摘している。

BepiColomboは、水星の内部構造をどのようにして解明するのだろうか。
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2018年に打ち上げられたBepiColomboは、水星を6回フライバイした後、2機の相補的な探査機である水星表面探査機(MPO)と水星磁気圏探査機(MMO)を2025年末に水星周回軌道に投入する予定だ。

ESAのチームは、MPOとMMOの両方の周回探査機に働く重力を測定することで、水星の重力場と内部構造モデルから求められた予測値とを比較できるはずだと、ニトラーは述べている。

水星をフライバイ(接近通過)するBepiColombo探査機の想像図(ESA/ATG medialab)

水星をフライバイ(接近通過)するBepiColombo探査機の想像図(ESA/ATG medialab)

ニトラーによれば、他にも次のような謎があるという。

水星の表面にある奇妙な空洞の成因

この空洞は、地球にあるカルスト状地形に似ていると考えられている。カルストは、主に石灰岩やドロマイトなどの水に溶けやすい岩石の溶食によって形成される。

空洞は恐らく、何らかの蒸発しやすい揮発性の構成要素が消失したことにより、岩石が表面下に沈んで形成される可能性が高い。だがニトラーによると、この構成要素が何かは、まだ明らかになっていない。
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翻訳=河原稔

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