宇宙

2023.11.28 08:30

水星に「生命が存在」する氷河がある可能性、NASA支援の研究チームが報告

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水星を研究している科学者たちは、この星の極域に氷河が存在する証拠を発見し、それらが生命を維持できるかもしれないと述べている。

「今回の画期的な発見は、水星の環境パラメーターについての我々の理解を広げ、この星が生命を維持できるかもしれないことを示唆している」と、11月17日に科学ジャーナルPlanetary Science Journalに掲載された論文の主執筆者のアレクシス・ロドリゲス(Alexis Rodriguez)は述べている

論文の著者らは、水ではなく塩でできた氷河が水星の極域の地下数マイルに存在し、そこに地球の極限環境に似た「居住可能なニッチな領域」が存在するかもしれないと考えている。この研究は、NASAのソーラー・システム・ワーキング(SSW)プログラムからの部分的な資金提供を受けている。

この論文は、水星よりも大きな木星の衛星ガニメデに有機物が存在する可能性があることを科学者たちが報告した数週間後に発表された。

もしこれが本当なら、水星での氷河の発見は、宇宙における生命の研究であるアストロバイオロジーに新たなフロンティアを開くことになる。この発見は、生命が太陽系全域の極限環境に存在する可能性を示唆するだけでなく、銀河系全域で発見されている水星に似た惑星が、生命を宿す可能性を示唆している。これまでの研究で水星は、生命が存在するためには太陽に近すぎる軌道を回っていると考えられてきた。

「我々の発見は、冥王星に窒素の氷河があることを示す他の最近の研究を補完するものだ」とロドリゲスは述べ、氷河が太陽系で最も高温な惑星と最も低温の惑星の両方に存在する可能性があると付け加えた。冥王星の氷河は凍った窒素で構成されている。

水星に存在すると考えられている氷河は、塩の流れに由来するもので、地下深くに存在していたが、隕石の衝突によって露出したと考えられている。地球では、特定の塩化物が最も過酷な条件下に居住可能なニッチ領域を生み出すことが知られている。

例えば、チリの高地のアタカマ砂漠では、塩分が多く乾燥した環境にもかかわらず、微生物が存在することが知られている。ロドリゲスは「このような考え方に基づいて我々は、水星には過酷な表面よりも住みやすい地下領域が存在する可能性があると考える」と語った。

寒すぎず暑すぎない領域

天文学者たちは、恒星の周りを回る新しい惑星を見つけた場合に、その惑星が恒星のハビタブルゾーンを回っているかどうか、つまり表面に液体の水が存在し、それが沸騰したり凍結していないかどうかを、生命の存在の可能性の基準にすることが多い。この寒すぎず暑すぎない領域は「ゴルディロックスゾーン」と呼ばれている。

今回発見された水星の氷河は、水星の表面下にそのような領域が存在する可能性を示唆している。「このケースで重要なのは、恒星からの適切な距離ではなく、惑星表面下の適切な深さにある」とロドリゲスは指摘した。

今回の発見はまた、従来の水星の地質学的な歴史の考え方に疑問を投げかけるものでもある。ある理論では、水星の氷河が、火山から放出された水の中で形成された可能性が示唆されている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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