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2023.12.01 11:45

バイオと宇宙の街に進化 久留米市発「第2のブリヂストン」が生まれる未来

Governor's Letter 09 福岡県久留米市の原口新五市長


かくして、久留米にはバイオ産業が続々と集まってきた。
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久留米地域を中心に、福岡県内に集積したバイオ関連企業は240社以上にのぼり、これまでの取組みが着実に実を結んでいる。中にはブライトパス・バイオなど、久留米リサーチ・パークから卒業して株式上場に進んだ企業もある。

原口も「最近、東京大学発のスリープテックを手がけるアクセルスターズや、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を応用した次世代型ワクチンなどの開発・製造をリードするVLPセラピューティクス・ジャパンなど、世界最先端のバイオテクノロジーを持つスタートアップが手を挙げて久留米にやってきました」と目を細める。
 
希少疾患向け医薬品の研究開発を手掛けるフェリックス、未病領域に特化した検査サービスを展開するヘルスケアシステムズ、、カイコ由来のワクチンを開発するKAICO、先端の三次元イメージング技術のサービスを提供するCUBICStarsなど、久留米から躍動するバイオ系スタートアップは枚挙にいとまがない。
 
これまでの福岡バイオバレープロジェクトの取り組みが評価され、2021年には国のバイオ戦略に沿った「地域バイオコミュニティ」第1号に認定された。第三セクターの「久留米リサーチ・パーク」が中核拠点となり、産学官が一体となってバイオ関連産業の拠点化を進めている。
 
「ここまでバイオ企業が集まってきたのも、20年以上の取り組みを続けてきたからこそ。当初は『久留米とバイオ』のイメージが結びつかず、認知してもらうのも一苦労。市の担当職員の熱意と、福岡県との密な連携が功を奏した、と私は考えています。
 
今後、久留米のバイオコミュニティをさらに発展、成長させていく必要があります。そのためには、久留米が企業に選ばれること。そして、企業の成功確率をあげることが重要だと考えています。県の服部知事ともしっかりとタッグを組んで新産業創出を進め、活力ある経済の創出を図っていきます」
久留米のバイオ産業集積は20年以上前から推進され、成長している。(Shutterstock)


久留米のバイオ産業集積は20年以上前から推進され、成長している。(Shutterstock)

ゴムのまちから宇宙へ ものづくりの基盤

原口がバイオと並んで成長産業の柱と見込むのが「宇宙」だ。もともと、福岡県自体が宇宙ビジネス県として知られる。ハード・ソフト技術の宇宙ビジネス転換が評価され、2020年には国から「宇宙ビジネス創出推進自治体」に選定されたほどだ。その中心で存在感を発揮するのが久留米市である。2023年6月、久留米×宇宙ビジネスの機運を高める国際シンポジウムが開催された。原口が活況を振り返る。

「ISTS(宇宙技術および科学の国際シンポジウム)は日本最大の国際宇宙会議として、第34回がここ久留米で開催されました。国内外から1万人規模の来場があり、宇宙ビジネスの議論や情報交換が活発に行われ、市民にも宇宙技術や科学を身近に感じていただくことができました。
 
シンポジウムの場を支えたのがアカデミアです。久留米工業大学は航空宇宙システム工学コースで宇宙関連の研究を重ねていますし、久留米高専が専門技術の実装化を進めてきました。さらに、民間企業では中小のものづくり企業が宇宙関連の技術を研鑽しています」
 
久留米市近郊の中小製造業13社が集まったNPO「円陣スペースエンジニアリングチーム(e-SET) 」は機械設計、精密機械加工、熱処理、表面処理などそれぞれの得意分野の技術を持ち寄り、人工衛星の本体構造を手がけている。「円陣」の部品は九州大発のベンチャー企業であるQPS研究所が手がける小型衛星に使用されており、初号機「イザナギ」がインドで、2号機「イザナミ」がアメリカで打ち上げられた。
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文=佐々木正孝 写真=菅 祐介

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SGイノベーター【九州・沖縄エリア】

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