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2023.11.28 09:00

全国拡大中!「雑談×AI」のポジティブ認知症予防策

大柏 真佑実
当初はタブレットの使い方が分からないシニアも多いため、井上を始めジョージ・アンド・ショーンのメンバーがまずは市内の公民館などで活動するオフラインコミュニティに出向き、対面でタブレットの扱い方やコンテンツの選び方などについてレクチャー。コーディネーターとしての役割も果たすことで、シニアの参加率と継続率を向上させている。
コンテンツの一つ、オンライン体操教室の様子

コンテンツの一つ、オンライン体操教室の様子

同事業には、大阪でも実績がある。2022年から大阪府が実施する「スマートシニアライフ」の実証事業としても採択。プロジェクトは計1000台のタブレット端末を高齢者に配布し、23社の事業者が参画する大規模なものだが、サービスの利用継続率は7割を超え、アプリケーションユーザー数は約500人に達した。

「先日、シニアの男性から『新しい生きがいができたよ。ありがとう』と言われた時は、本当に嬉しかったです。皆さん、コミュニティに参加されるようになってから、笑顔が増えています」(井上)

認知症になる前も、なった後も、共に明るく生きる仲間がいる

現在、ジョージ・アンド・ショーンは、神戸や大阪でのプロジェクトを継続しつつ、兵庫県加古川市、鹿児島県鹿屋市でも実証事業を開始している。さらに愛知県では、産学行政連携の研究開発プロジェクト「あいちデジタルヘルスコンソーシアム」で、同様の実証事業を予定。同コンソーシアムでは、ジョージ・アンド・ショーンを始め計17社・16団体が発起人となっており、同社が手がけてきた自治体との取り組みにおいて、最大規模になる見込みだ。

また、現状ではタブレットをシニアに配布しているが、インターフェイスをシニアにより馴染みがあるテレビへとシフトさせることも視野に入れているという。

「例えばシニア男性のコミュニティ参加を促す材料は、シニア男性が教える場を設けて承認欲求を満たすことだったりします。すると、オンラインコミュニティはCtoCの教育の場にもなり、シニアが子供たちや若者に何かを教える場としても活用できます。さらに、異なる地域に住むシニア同士を結ぶことで新しいコミュニケーションが生まれ、それで互いの場所をリアルで訪れてみたいという話になれば、新しいツーリズムの形が誕生するかも知れません。

根底には、シニアの方に『生きていて良かった』と感じていただき、残りの人生を謳歌してもらえる仕組みを作りたいという、強い思いがあります」(井上)

認知症になる前も、なった後も、共に明るく生きる仲間がいる。デジタルとアナログを融合させ、高齢化日本でアクティブシニアを増やすオンラインコミュニティの今後に、注目したい。

◎井上憲(いのうえ けん)ジョージ・アンド・ショーン 代表取締役/共同創業者。日本オラクル ソーシャルデザイン推進本部 本部長兼務。社会起業家。2006年、東京工業大学院卒業後、日本オラクルへ新卒入社。事業開発を歴任し、2022年、日本オラクルと顧客企業との共創を事業とする「ソーシャルデザイン推進室」の本部長に就任。2016年、自身の祖母の認知症をきっかけに、ジョージ・アンド・ショーンを創業。見守りタグ+ヘルスケアAIを活用した「地域活性化」のサービスや、高齢者認知症に関連する社会課題解決に向けたAIを用いたヘルスケアサービスを提供。

文=大柏 真佑実

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