「我々は1つの製品、1つのプラットフォームで世界中のニーズに応えようと考えていない。我々はシンガポールの企業をターゲットにしており、市場ごとに製品とパートナーをローカライズしている」とYouTripのCEOを務めるチューは話す。
東南アジアをターゲットにするYouTripには、投資家の注目が集まっている。同社は10月26日、エピックゲームズやOYO、フォーブスの「アジアの注目すべき企業100社」に選出されたCosmartに出資するライトスピード・ベンチャー・パートナーズからシリーズBラウンドで5000万ドル(約75億円)を調達したと発表した。これにより、同社の累計調達額は1億550万ドルに達した。同社は、このラウンドでの評価額を明らかにしていない。
「YouTripが消費者の信頼獲得とブランドロイヤリティーの構築に成功したことが、出資の決め手となった。同社は、東南アジアの多くの地域にサービスを拡大する能力を示した唯一の消費者向けクロス・ペイメント企業だ」と、ライトスピードのパートナーであるピン・ロージンダクル(Pinn Lawjindakul)は話す。
ロージンダクルは、YouTripが異例とも言えるほど高いブランド認知度を誇るのは、東南アジア特有の課題を解決するソリューションを提供していることが理由だと考えている。「東南アジアが1つの国だと考えている人が多いが、実際には多くの国と通貨で構成されている。東南アジアでは、通貨と為替レートの話題が日常会話に浸透しており、適切な為替レートを探すことが人々の悩みの種となっている」と彼女はいう。
YouTripは、東南アジアのユーザーに、150以上の通貨に対応したバーチャルと物理的なデビットカードを提供している。同社は、現地の両替業者と提携することで、海外でのカード使用で発生していた「隠れた手数料」を排除した。また、同社のアプリは、シンガポールドルや米ドルを含む10通貨の両替にも対応している。同アプリは、Google Playストアで100万ダウンロードを突破している。
チューによると、YouTripは4月に黒字化を達成したという。2023年3月までの1年間の売上高は、前年同期比393%増の1770万シンガポールドル(約20億円)に拡大し、損失は前年の1000万シンガポールドルから760万シンガポールドルに縮小していた。