使われている重量500〜1500kgほどの滑空弾は、手製の部品も多い粗製爆弾だ。だが、効果を発揮している。ウクライナの軍人オレクサンドル・ソロニコによれば、滑空弾はウクライナ兵の間で「最大の恐怖のひとつ」になっているという。
「ロシア軍は滑空弾を大規模に使用している。精度については言えないが強力な兵器だ」とソロニコは述べている。
ウクライナのイーホル・クリメンコ内相の発表によると、11月5日、ヘルソン州の人口密集地に87発の滑空弾が撃ち込まれた。ワシントンD.C.にある戦争研究所(ISW)は、ロシアのウクライナ全面侵攻後、ロシア軍が連続して発射した滑空弾の数としてはこれまでで最多だったと報告している。
クリンキについても、独立調査団体のコンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)が「(砲撃や滑空弾によって)被害を受けていない住宅はおそらく1軒もない」と言及している。
ウクライナ軍のドローン運用部隊は現在、クリンキの上空を支配しているが、これはロシア軍のドローンを妨害する電子戦部隊の集中的な努力によるところが大きい。だが、こうした航空優勢はヘルソン州南部全域に及んでいるわけではない。ロシア軍機が滑空弾を撃つために、ドニプロ川から40kmくらいの距離まで難なく接近できているのは明らかだ。
ウクライナ空軍はS-300地対空ミサイルシステムでヘルソン州北部を防御している。それがわかったのは、ヘルソン州で最近、ウクライナ軍のS-300の発射機少なくとも1基がロシア軍の攻撃で破壊されたからだ。
だが、射程およそ120kmのS-300は、クキンキの橋頭堡を十分に防御できるほど近い距離には配備されていないようだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が先週、ヘルソン州での防空を強化する考えを示したのも、こうした状況と関係しているだろう。
クリンキの橋頭堡に張り付いている海兵隊の勝敗は、こうした追加防御ができるかどうかで決まるだろう。
(forbes.com 原文)