ドローンの操縦士は攻撃を阻止しようと動いた。2両目のロシア軍の戦車が1両目の乗員を助けにきたとき、ドローン操縦士はその戦車も攻撃した。擲弾は開いていた砲手用のハッチのすぐ近くを直撃したため、辛うじて助かった砲手は動揺し、明らかに恐怖におののいていた。
数千ドル(数十万円)のドローンが数百万ドル(数億円)もする戦車を2両立て続けに攻撃したことは、ロシアがウクライナに対して仕かけた1年10カ月にわたる戦争の新たな現実を浮き彫りにしている。擲弾を投下する再利用可能な爆撃機型、爆発物を搭載した使い捨ての一人称視点(FPV)型といった小型ドローンは、今やウクライナ、ロシア双方の装甲車にとって最大の脅威だ。
ロシア軍とウクライナ軍はそれぞれ数千人ものドローン操縦士を雇っているが、バフムート郊外で戦車2両を攻撃した第30旅団のドローン操縦士の腕前は群を抜いている。経験が豊富か、非常に才能があるか、あるいはその両方だ。
第30旅団はドローンがとらえた映像を編集したものを誇らしげに公開した。映像の冒頭では、ロシア軍の1両の戦車がウクライナの陣地に突入し、125mmの主砲を数発発射する。
明らかに戦車は単独行動で、歩兵や防空の支援もない。戦車1両での作戦は危険だが、ウクライナでは珍しいことでもない。「ロシア軍は部隊の交代を察知すると、よく戦車で砲撃を行う」と英王立防衛安全保障研究所の上級研究員ジャック・ワトリングとニック・レイノルズは研究で指摘している。
単独での攻撃で生き残るためには、戦車の乗員はすばやく移動し、敵のドローンや大砲が狙ってくる前に味方のいる陣地に戻らなければならない。
最近の奇襲では、ロシア軍の戦車の乗員が攻撃を成功させられる見込みはなかった。第30旅団のドローン操縦士は初めからロシア軍をとらえており、撤収時の攻撃に備えて砲塔を後ろ向きにして未舗装の小道を走って逃げる戦車を追跡している。
This is one of the most ridiculously amazing feats I have ever seen from a drone pilot. pic.twitter.com/cEZQrDQg1x
— Andrew Perpetua (@AndrewPerpetua) November 11, 2023