欧州

2023.11.16 09:00

古いT-72BA戦車を使い果たしたロシア部隊、さらに古いT-72Bを投入

ロシア軍のT-72B戦車(Abinieks / Shutterstock.com)

ロシア軍のT-72B戦車(Abinieks / Shutterstock.com)

ロシア軍で、また別の連隊が古いT-72戦車を再装備したようだ。ロシアは、より近代的な戦車の生産拡大に必死だが、ウクライナでの甚大な損失により、技術面での後退を強いられる状態が続いている。

ロシア軍にとって慰めがあるとすれば、それはウクライナ軍も同様に最新の戦車を入手するのに苦労しているということだ。

10月下旬に撮影され、今週ネット上に出回った写真には、ウクライナ東部ルハンスク州に展開するロシア軍第488自動車化狙撃連隊所属とされる戦車兵が、T-72B戦車と一緒に写っている。

T-72Bは古い。運用が始まったのは1985年だ。

だが、ウクライナでT-72Bが戦っている様子は以前にも目撃されている。それもかなりの数だ。実際、ロシア軍は何百両ものT-72Bを失っており、独立系アナリストはそうした損失を確認している。第488連隊のT-72Bについて注目すべきは、それが何に取って代わったものなのかということだ。

第488連隊は最近まで、T-72BAを配備していた少なくとも4個の連隊・旅団のうちの1つだった。T-72BAはT-72Bを改良したもので、エンジンが改善され、主砲である125mm滑腔(かっこう)砲の安定性が向上している。

T-72BAはかつて、ロシア軍では珍しい存在だった。ロシアのメディアは2016年、重量46トン、乗員3人のT-72BAについて「試験的な性格を持っている」と評価。ロシアは約700両のT-72BAを生産したが、ウクライナ侵攻に先立ってその多くを予備として維持していたか、倉庫に保管していた。

T-72BAは真に求められていた戦車ではない。元々はロシアの戦車メーカー、ウラルバゴンザボドがより近代的ではるかに高価なT-90の代替として1990年代後半から提供していたT-72Bを、わずかにアップグレードしたものだ。ロシアの経済は1990年代後半、かなり混乱していた。

T-72BAは「ロシアの財政難の結果として設計されたもので、(国防省は)もはやT-90を購入する余裕がなかった」と米陸軍は説明している。つまり、T-72BAは一時しのぎのものだった。

だがそれから25年がたち、ロシア軍はウクライナで2000両以上の戦車を損失。ウラルバゴンザボドがT-72B3とT-90の増産に苦慮する中、一時しのぎのT-72BAさえも尽きつつある。今夏の損失を集計したオブザーバーの推計によると、これまで二十数両のT-72BAが損失したり鹵獲(ろかく)されたりした。実際の数はもっと多いだろう。
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翻訳=溝口慈子

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