堀田:そこで、今までホテルや商業施設で使う敷き込み式のウールカーペットの製造をメインにBtoBのビジネスだけだった事業を、消費者とのコミュニケーションができる方法を増やそうと、2016年にBtoCのウールラグブランド「COURT(コート)」を始めました。
堅田:堀田さんの会社は今でもBtoBが主軸ですが、BtoCのブランドを始めることでどんな効果があったんでしょうか。
堀田:BtoBのビジネスだったとしても、目の前のバイヤーさんや商社さん一人一人と向きあってコミュニケーションをとることはtoCと同じなんです。なのでtoC型のコミュニケーションを、toBでも取り入れることで、問い合わせ件数も大幅に増え、顧客獲得や販路拡大につなげることができました。
「目に見えないものへの投資」を
堅田:BtoBでも一人一人に向き合うことを意識されているんですね。一見遠回りな気もしますが、そういったブランディングをすることに対して周りから反対されることはなかったんでしょうか。堀田:父親からは「ブランディング? 何を言っているんだ」って反対されてました。
内田:私も父親相手にひたすらプレゼンをしていましたね。デザインとかブランディングとか目に見えないものに対して支払いが起きる不安は父親の世代は強かったと思います。
堅田:私自身も事業承継に携わる上で、次の世代の人がオーナーを納得させづらいということはよくありました。米津さんはプロダクトマネージャーとして、全国のメーカーを周りながらブランディングや商品開発、生産管理まで一貫して行っていますが、同じような経験をしたことはありますか。
米津:やはり材料や機材への投資に比べて、形がないものや目に見えないものへお金を出すことに、抵抗がある人は多いです。ですが、目に見えるものにはみんなお金を出すので差別化できないんです。これからは特にデザインやブランディングなど、可視化しにくいクリエイティブに対してどうお金を使うかが大切だということを理解してもらう必要がありますよね。
クリエイティブ活用の失敗例から学ぶ、成功の秘訣
堅田:事業の成長につながるまで失敗したことはありましたか。堀田:自社のウールブランド「コート」を始めるまでは、失敗しかありませんでした。カーペットを多くの人に使ってもらおうと、啓蒙活動のウェブメディアを立ち上げてみたりもしましたが、お金をかけ続けることに覚悟が持てず、2年半で閉じました。
堅田:失敗した原因はなんだったのでしょうか。
堀田:なにか始めないと!という思いが先行して、どういう結果が出たら成功とするのか、ゴール設定をしていなかったことが原因のひとつだったと思います。ですが、そういった失敗の積み重ねがなければ、間違いなく今の成功にはつながっていません。とりあえずやってみるという思い切りもときには必要なのかもしれません。
堅田:何から始めたらいいかわからない事業者へアドバイスはありますか。
堀田:業界外で目指すべき姿を見つけるのがいいと思います。私自身、あるスコッチウイスキーの会社の考え方に感化されたことがあって。自分たちが美味しいと思うウイスキーを追求するという、自分起点の考え方がすごくいいなと思い、その会社のようになりたいと思ったことを言語化しました。そうすることで自社の成功のビジョンを明確にできたと思います。