事業継承

2023.10.27

まちづくりのノウハウも「先輩から後輩」へ 官民フラットな部活的組織

まちづくりの中でも、官民連携や市民協働の文脈での取引スタイルのひとつに「行政からの業務委託」がある。
 
行政が予算を確保し、仕様を策定し、プロポーザルや随意契約などによって受託者を決め、事業目的を期限の中で遂行し、納品と入金をもって業務は完了する。

「行政からの業務委託」最大の壁

一定のアウトプットを出す事だけが目的の事業であれば何の問題もないが、まちづくりにおいては、プロジェクトやコミュニティは事業終了後もレガシーとして残り継続していく。しかし多くの事業が、契約終了後に民間で自主自律的に運営できる事を見越したノウハウ移転まで設計しきれておらず、事業そのものも消えて無くなり、残されたプロジェクトやコミュニティが行き場を失い、結果自然消滅してしまうという場面を多々見聞きする。
 
事業者としてもここは仕様に含まれない以上、責任範囲ではなく、また企業秘密ともいえる様々なノウハウを移転することは自らの将来のビジネスチャンスを奪うことにも繋がるのでまさにトレードオフな関係でもある。
 
私たちが渋谷区からスタートした地域内官民共創のまちづくりプログラム「つなげる30人」も、全国展開するなかで大半が行政からの業務委託案件であった。
 
当初は一定の成果をあげていたが、コロナ禍に行政側の予算の優先順位が変わった事もあり、冒頭のような「契約期間終了」(概ね3年のケースが多い)の壁にぶち当たるケースが増えた。
 
一定の区切りとして割り切ることも出来るのだが、「つなげる30人」は「多様なセクターのまちづくりのプレイヤーを毎年30人ずつ増やしていく事」が肝であり、継続運営しコミュニティを重層化させること意味があるため、「これまで積み重ねてきた事業やコミュニティをどう継承すべきか」「契約満了を言い訳に引き継ぎもせず去る事は無責任なのでは」と、頭を抱えた。
 
しかし、前述のように「引き継ぎ」は、事業者の持ち出しでの稼働となる。引き継いで運営する会社や組織の交渉もしたが、なかなか思うようにいかず、休眠するエリアも出てきた。
 
そのような問題意識を抱えながら昨年度「一般社団法人つなげる30人」を立ち上げ、これまでの業務委託モデル一辺倒ではなく、各地域が「自主運営」が出来るようサポートする体制へ移行したことは以前、書いた通りだ。
 
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まちづくりをローカルに横展開する方法 4つの壁とノウハウ移転

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文=加生健太朗

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