先天梅毒の新生児、米国で「深刻な水準」に 世界中で感染拡大

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米疾病対策センター(CDC)は、米国で先天梅毒の新生児の数が「深刻な水準」に達しているとする報告書を発表した。治療に欠かせない抗生物質が不足するなか、一時は根絶も可能かと思われたこの感染症にかかる患者が「驚異的なペースで急増している」と警告している。

CDCによると、先天梅毒の新生児はここ数年の間に急増。2021年には過去27年で最も多い2000件以上が報告された。2017年と比べ、3倍以上の数となっている。

一方、世界保健機関(WHO)の推計によれば、2020年に梅毒に感染した15~49歳の人は、世界全体で約710万人にのぼっている。感染者の大半は症状がなく、感染に気付いていないという。

新生児の発症は「予防可能」

胎内で母親から梅毒に感染した場合、胎児は流産や死産となる可能性がある。また、誕生後には失明や難聴、骨の異常、脳や神経の障害といった重篤な症状が現れる。

だが、先天梅毒は母親が妊娠中に検査を受け、陽性の場合には抗生物質を使用することによって、予防も治療も可能な病気だ。CDCは、先天梅毒の新生児は深刻な健康上の問題が起きるのを防ぐため、または数週間~数年のうちに死亡するのを防ぐため、出生後「速やかに」抗生物質による治療を受ける必要があるとしている。

ただ、梅毒の治療に主に使用される抗生物質、米製薬大手ファイザーのペニシリン製剤「バイシリン(Bicillin)」は現在、大幅に不足している。供給量が近い将来に元通りになる兆しは、いまのところ見られていない。

この薬は、次に効果的なもう1つの抗生物質「ドキシサイクリン(doxycycline)」よりも、はるかに使い勝手が良い。バイシリンが1~3回の注射で済むのに対し、ドキシサイクリンは数週間にわたって1日複数回の服用が必要となる。また、妊娠中に安全に使用できることがわかっているのは、バイシリンだけだ。

保健当局は、妊娠していることがわかった人はなるべく早く検査を受けることを推奨している。また、居住する地域の感染状況や妊婦自身の感染リスクの程度によって、妊娠後期に入った時点、出産時にも検査を受けるべきだとしている。
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編集=木内涼子

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