環境配慮型「暮らしのサブスク」で 都市と自然のハイブリッドライフを叶える
本間貴裕|SANU ファウンダー兼ブランドディレクター「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」を理念に掲げ、ゲストハウスやホステルを運営するBackpackers’ Japanで起業後、福島弦と意気投合し、19年に共同でSANUを創業。「Live with Nature.」をミッションに、月額55000円で郊外にある複数の施設に滞在できるサービス「SANU 2nd Home」を展開する。
設営する木造キャビンにおける国産材の使用や建築面での工夫などが環境再生型事業のモデルとして高く評価され、「ウッドデザイン賞2022」最優秀賞を受賞。24年末までに全国30拠点200室を構える事業拡大を予定している。
「街のお風呂屋さん」を絶やさない 独自のノウハウで廃業寸前の銭湯を次々救う
湊三次郎|ゆとなみ社 代表取締役「銭湯活動家」を自称し、2019年に銭湯継承の専門集団「ゆとなみ社」を創設。現在は京都府内外で直営8軒、コンサルタントを含め計10軒の銭湯の経営を支える敏腕経営者だが、大学での専攻はブラジル文化ポルトガル語。銭湯経営はもとより、起業しようなどとはつゆほども考えていなかった。
京都の大学へ進学後、下宿先近くの銭湯にハマり、全国各地の銭湯巡りを始めた。在学中に府内の銭湯約160軒を制覇。これまでに全国700軒もの銭湯に入浴してきた。経営側に転身したのは15年、かつてアルバイトをしていた「サウナの梅湯」が営業終了を検討していると聞きつけ、とっさに後継者に立候補したことがきっかけだった。「従来の運営をなぞるだけではいけないとわかっていましたし、銭湯の運営業務って、基本的には毎日同じルーティンワークで退屈なんですよ。だから何か面白いことをやりたくて」。
古びていた設備の改装に加え、Tシャツやステッカーなどオリジナルグッズの販売、浴場を会場にした音楽イベントの開催など、銭湯を舞台に多様なアイデアを実現。昨今のサウナブームも追い風となり、廃業に傾いていた1号店も、今では1日平均350人、多いときは760人もの集客があり好調だ。全社では創業2期目で法人売上2億円を突破。独自のノウハウで、銭湯が生き残るモデルを確立したといえる。
古くから地元に根付く憩いの場だからこそ、利用客同士のトラブルも起こる。時には一人暮らしの高齢利用者と福祉団体をつなぐ役割を果たすなど、銭湯外のコミュニティにも貢献している。
「銭湯は“生活臭”がする店であるべきだと思っています。新しいことへ取り組みつつも、その地域やもともとの経営者の色を排除せず、慣れ親しまれた銭湯のかたちを残していきたい」
しかし、銭湯を取り巻く状況はいまだ厳しい。直近10年で、京都府内の銭湯も60軒以上がのれんを下ろした。
「銭湯のように普遍的な強さをもったものを大事にしたい。古くからあるお店が新しいことへ踏み込む最初の一歩をお手伝いすることで、街全体を豊かにしていきたいと思っています」
日本人の「風呂」に対する愛情を信じ、銭湯という文化の継承に全力を注ぐ。