欧州

2023.10.26 08:30

装備不足のウクライナ領土防衛隊、鹵獲した古いロシア戦車をフル活用

遠藤宗生
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重装備がないことで、ウクライナ領土防衛隊の旅団はロシア軍との戦いで困難に直面してきた。アナリストのミコラ・ビリエスコフは、英王立防衛安全保障研究所のウェブサイトに5月に掲載されたレポートで「昨年4月中旬以降、戦闘の中心地がウクライナ東部に移り、領土防衛隊の配置はロシア軍、ウクライナ軍双方の多くの戦術変更の影響を受けた」と指摘している。

「ロシア軍は幹線道路を移動する装甲車でウクライナ軍の陣地の制圧を試みるのではなく、砲兵支援によって前進する戦略に切り替えた。戦闘はより非接触的な要素が強くなり、侵攻後の最初の1カ月に見られた接触戦の代わりに、砲撃戦が勝敗を分ける要因となった」

「このような条件下では、せいぜい対戦車誘導ミサイルと擲弾(てきだん)発射機で武装した領土防衛隊の編隊がロシア軍に立ち向かうのは、以前にも増して困難だった」

領土防衛隊にはもっとしっかりとした装備が必要だ。だがウクライナ国防省は、数十個の旅団の装備は言うまでもなく、急激に増大している陸軍や空中機動軍、海兵隊に配備する十分な数の最新の戦車や戦闘車両、大砲を調達するのに苦労している。

そのため、鹵獲したロシア軍のT-62を領土防衛隊に配備しても何ら驚くことではない。T-62の装甲は薄く、火器管制も粗雑だが、何もないよりはましだ。

また、第110旅団がT-62が展開されていた戦線にいたことも驚くにあたらない。同旅団は、領土防衛隊の中でも最も経験豊富で優れた旅団のひとつであり、ウクライナ南部と東部で過酷を極める戦闘をしのいできた。ビリエスコフは同旅団の実績について「直面した状況を考えると、非常に素晴らしいものだった」と評価した。

戦車があれば、以前なら撤退せざるを得なかったような状況でも、攻撃に耐えて戦うことができるはずだ。たとえ、その戦車がロシア軍が遺棄した60年前のものだとしてもだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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