1万7000以上の島々から構成される世界最大の群島国家であるインドネシアにとって、漁業と魚の養殖は大きなビジネスだ。しかし、昨年のGDPに占める漁業の割合は3%に満たず、特に養殖業における状況は複雑だ。
政府のデータによると、この分野における産出額は、2013年から2021年にかけてほぼ倍増したものの、養殖業者の数は380万人から220万人に減少したという。低収入を理由に多くの人々が養殖業から離れているのだ。そんな中、eフィッシャリーは、養殖業者たちの収入を大幅に増加させたと主張している。
学費を稼ぐために始めた事業
ジャカルタで育ったフザイファは、漁業や農業の出身ではなかった。彼の父親は市内で建設プロジェクトの監督を手伝い、母親は地元の市場で米を売っていた。実家は現地で最も貧しい地域の1つに隣接するエリアで、小学校の同級生の親たちは廃品回収業で生計を立てていた。フザイファは、エリート校のバンドン工科大学への進学を勝ち取ったが、学費を稼ぐために自ら漁業に乗り出すことにした。生け簀を借りてナマズを繁殖し、2012年に大学を卒業する頃には、76の池を管理していた。大学で生物学や水産養殖を学ぶ傍ら、フザイファは、餌代がいかに利幅を圧迫しているか、地元の魚市場が中間業者によっていかに買い叩かれているかなど、養殖業者の苦難も学んだ。
この経験から彼は、他のスタートアップのようにソフトウェアに注力するのではなく、ハードウェアを作ることにした。魚の給餌をコントロールする製品だ。
2014年に最初のモデルを送り出したeフィッシャリーの自動給餌器は、池の状態を監視するセンサーを備え、データとアルゴリズムに基づいて餌の量を最適化する。スマートフォンから操作可能でソーラーパネルからの電力で使用可能なこのデバイスを、同社は月額1万5000ルピア(約140円)でレンタルしている。