起業家

2023.10.30 14:00

ナマズの養殖池から「ユニコーン」を誕生させたインドネシアの若き起業家

日下部博一
同社の顧客の1人であるアグス・リアワンは、1997年のアジア金融危機の際に会社勤めを辞め、バリ島でナマズの養殖を始めた。2021年にeフィッシャリーが現地に進出した際に、彼は同社の自動給餌器を契約した。ナマズの稚魚は1日2回餌を与える必要があるため、餌やりを自動化するツールは役に立つ。さらにリアワンは、魚の餌のかたちで提供されるeフィッシャリーからの融資のおかげで事業を拡大し、今では16の池を手がけている。同社によれば、バリ島には約3000の魚の養殖業者がいるが、その3分の1がeフィッシャリーの顧客だという。

現在の収益源はファイナンス事業

フザイファによれば、自動給餌器はeフィッシャリーの事業を軌道に乗せたが、この3年間で事業モデルは変わり、このツールはもはや大きな収益源ではないという。その代わりに、同社は銀行から水産業者への融資の仲介などのファイナンス事業や、魚の販売からマージンを得ている。9月にシンガポールで開催されたフォーブス・グローバルCEO会議でのプレゼンテーションで、フザイファは「養殖池は新たなフィンテックなのです」と冗談交じりに語った。

「私たちが期待するレベルの成長を達成するためには、飼料メーカーや金融会社との提携が必要です。もし、私たちが自ら飼料工場を建設したら、養殖業者を罠にはめて自社製品を買わせ、彼らを助けるという当初の理念に背く会社になってしまうかもしれません」とフザイファはいう。

eフィッシャリーは、現段階では競合他社を持たず、資金調達環境が厳しくなっている現在でもすでに収益を上げているため、事業を拡大する上で有利な立場にある。フザイファは、2025年までに自社のエコシステム内の池の数を現在の約3倍の100万個に増やし、魚の輸出に乗り出したいと考えている。彼はまた、国外ではバングラデシュやタイ、ベトナムで試験プロジェクトを開始し、特にインドでの成長に注力すると述べている。

フザイファによると、インドはインドネシアと同様に市場が細分化されているが、水産業者数が多く、生産性が低いため、同社がやるべきことは多いという。eフィッシャリーはまた、養殖したエビを米国市場に輸出する事業も開始しており、将来的には米国での上場を視野に入れている。

そしてフザイファは、さらに大物も狙っている。eフィッシャリーのウェブサイトには、彼の会社のミッションが「人々のデジタル格差を埋め、世界の食料ニーズに応えることです」と書かれているのだ。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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