起業家

2023.10.30 14:00

ナマズの養殖池から「ユニコーン」を誕生させたインドネシアの若き起業家

ギブラン・フザイファ(C)X @gibranhuzaifah

ギブラン・フザイファ(C)X @gibranhuzaifah

ジャカルタ出身のギブラン・フザイファが、自身の会社をスタートアップからユニコーンに育てあげた道のりは、他のインドネシア人の起業家たちとは著しく違っている。主に都市部に顧客を持つマーケットプレイスのアプリを開発するのではなく、彼は農村部で働き、一風変わった、無視されがちなビジネスに目をつけた。ナマズの養殖だ。

現在33歳のフザイファは、文字どおり、養殖を一から学んだ。インドネシアの名門、バンドン工科大学(ITB)に在学中に、学費を稼ぐために養殖池を借りて事業を始め、卒業後の2013年に、魚やエビの養殖業者を対象に、スマートフォンから操作可能な自動給餌器を販売する会社を立ち上げた。

「会社を始めた当時は、水産業の新興企業がユニコーンになるとは誰も思いませんでした」と、今では7万人の顧客を抱えるeFishery(eフィッシャリー)の共同創業者でCEOのフザイファは語る。「私も公言する勇気があったわけではありません。しかし、私たちはそれを実現したのです」

eフィッシャリーの評価額は、今年7月、アラブ首長国連邦の政府系投資ファンドである42Xfundが主導し、ソフトバンクが参加したシリーズDラウンドで、2億ドル(約300億円)を調達した際に、10億ドル(約1500億円)を突破し、世界初の水産養殖業界におけるユニコーンとなった。

水面のように平坦ではなかった成功への道のり

しかし、同社の成功への道のりは、養殖池の水面のように平坦ではなかった。顧客となる養殖業者や投資家への売り込みがうまくいかず、何度も拒絶されたという。

「最初の5、6年が一番大変でした。私は投資家たちに、この種の分野は市場を啓蒙するのに時間がかかり、忍耐が必要だと言いました」

しかし、その忍耐は報われた。現在、約30万の養殖池に関わるeフィッシャリーは、自動給餌器の提供のみならず、養殖された魚の販売支援や、業者への資金提供などのファイナンス事業も行う、この分野のバリューチェーン企業となっている。しかし「垂直統合型の独占ビジネスを構築しようとはしていません。エンド・ツー・エンドのビジネスモデルを構築しつつも、パートナー、特に養殖業者には自由と独立性を与えたいのです」と、フザイファはいう。
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編集=上田裕資

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