2. 飼い主の性格の違い
性格的な特徴も、ペットを飼う人が幸せかどうかを左右する。心理学には、性格特性に関するビッグファイブ(特性5因子)と呼ばれる理論がある。性格の特性を「神経症的傾向」「外向性」「協調性」「誠実性」「開放性」の5つに分類するものだ。この観点から見ても、犬の飼い主と猫の飼い主には違いがあることが、2016年の研究で明らかにされている。「ペットと幸福(Pets and Happiness)」と題したこの研究論文によると、犬の飼い主は、猫の飼い主よりも協調性が高く、神経症的傾向が低い。犬の飼い主は外向性が高いこともわかっている。外向性は、ウェルビーイングを表す一つの指標だ。
もちろんこれは、ニワトリが先か卵が先か、と同じ議論だろう。犬が飼い主を幸せにしているのか、それとも、幸せな人は犬をペットに選ぶ傾向が強いのか。おそらくは、どちらの因果関係も成り立つ。
論文の著者は、こう述べている。「ペットを飼っている人と、飼っていない人のあいだには、さほど違いはないかもしれない。しかし、『犬を飼うこと』と『有益な結果』に関連性があるのは明らかだ」
3. 飼い主の性差と自己肯定感
2020年に発表されたデータを精査してみると、犬を飼っている男性は、ペットを飼っていない男性よりも自己肯定感が高いことがわかる。これに対して、猫を飼っている女性は、ペットを飼っていない女性より自己肯定感が低い。犬を飼う男性の自己肯定感が高い理由として考えられるのは、犬を飼うことで、自らを群れの一員、あるいは群れのリーダーだと認識するようになることだ。そうした認識が、自己肯定感を高めているのかもしれない。また、犬を飼う男性の自己肯定感が高くなるのは、散歩中に通りすがりの人から犬をほめられることに要因がある可能性もある。
他方、猫を飼っている女性は「オールドミス」だとか「猫おばさん」というネガティブな固定観念でみられがちだ。そのせいで疎外感を覚えることもあるだろう。