「脱成長」を掲げる街、パリに学ぶ。広告費ゼロでも大人気のスニーカー?


店内の量り売りの買い方はとてもわかりやすい。一度に量が大量に出過ぎない設計で欲しい量を買いやすく、通常であればパッケージに記載されているような情報はQRコードに集約。「もっと知りたい人」は、このQRコードを読み取ることで商品情報にアクセスできるのだ。季節もののパッケージデザインがされた商品が、そのシーズンをすぎることで、食品ロスになる可能性も防げる。
Packaging-free Network参加企業TOUTBONのオーナー。商品情報が記載されたQRコードを読み取る様子。

どんなものにも、進んでいる理由がある。フランスでは、洋服や食品の廃棄禁止令や、コンポストの家庭での義務化(2024年から)など、他国と比べると法規制で進んでいる面が多い。そうした背景にあるのが、こうした市民主体の団体や企業の「声」なのだ。

企業がサーキュラーエコノミーに取り組むためのヒントは?

フランス初のサーキュラーエコノミーに特化したデザインスタジオ「Circulab(サーキュラボ)」。22カ国、100人以上のサーキュラーエコノミーの専門家であるデザイナー、コンサルタント、トレーナーなどのコミュニティをつくり、それを通じて企業や自治体のコンサルティングおよび設計サービスを提供している。

「私たちの使命は、人間や都市、生物多様性にポジティブな影響を与えること。そして私たちは、経済活動がその推進力になると確信しています」
Circulab代表のJustineさん

Circulabが取り組むプロジェクトはさまざま。パリ市との使い捨てプラスチック段階的廃止のロードマップ構築や、企業の経営層を対象にした循環型のビジネスモデルのトレーニングなども行う。

Circulabの特徴は、自然からインスピレーションを得たアプローチにより、バイオミミクリーなどの手法をプロセスに取り入れている点だ。組織がビジネスモデルやプロジェクトを再考し、長期的な影響を生み出すことを支援するために、Circulabによって作成された独自のツール「Circular Canvas」を使用。システム思考により、経済的実行可能性やエコシステム、持続可能性のバランスを見つけることができる。

Circular Canvasは、日本語でもダウンロード可能。

「サーキュラーエコノミーを推進するときには、『サステナビリティ』という言葉はあえて使わないようにデザインしています」それが、Circulabの考え方だ。

「サーキュラーエコノミーのプロセスにはさまざまなステップがありますが、循環させること自体が目的ではありません。人々が楽しむことができるという基本的なニーズに答えることが大切です」

企業や自治体、学生など幅広い層の思考を変えるCirculabの取り組みには、サステナビリティを推し進めるために大切なヒントが詰まっていた。

第二部:人々の五感に触れ、心地よいサステナビリティをつくる企業

パリで生活していると、「サステナビリティ」や「SDGs」などの言葉を見かけることは少ない。それは人々が、そうした「言葉」ではなく、「実感値としての心地よさ」を大切にしているからなのかもしれない。
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文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team 写真=Masato Sezawa

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