「脱成長」を掲げる街、パリに学ぶ。広告費ゼロでも大人気のスニーカー?


また、VEJAのヨーロッパの店舗と電子商取引の物流は「Log’ins」というソーシャルインクルージョンを大切にする企業によって管理されており、長期失業者や障害者、または社会的・経済的困難を抱えている人々などに労働市場に参入するためのトレーニングや支援が提供されている。
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「広告費をゼロにすることで、フィクションではないリアリティに投資をしています。それによって、生産者に適切な賃金を支払いながらも他の大手競合ブランドと同じ価格を実現することを可能にしているのです」
VEJAの数値

創業から18年、すでに400人以上のチームメンバーを抱えるVEJA。その特徴は、企業の成長ペースを考慮していること。社員のウェルビーイングにも配慮しながら、快適に働けるペースを保っている。「これだけ大きな企業になっても代表との距離は近い。

また、残業なども少なくのびのびと働いている」という話が出たのも印象的だった。これができるのは「VEJAが投資家のいない、完全に独立した企業」であるからだという。
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成長しようと思えばもっとできた。だけど、VEJAはその道を選んでいない。そこから私たちが学べることはなんだろうか。
VEJAのコーポレートコミュニケーションを担当する二人。Brune(左)とAlice(右)

第三部:無限の成長を追求する資本主義に代わるものとは?

フランスは、行き過ぎた利潤の追求による弊害をなくし、民主的な運営により、人間や環境にとって持続可能な経済社会をつくることを目的とする「社会的連帯経済(économie sociale et solidaire: ESS)」が古くから発展している。2014年には社会的連帯経済担当大臣が任命され、市民が社会的な経済活動を行うための法整備が進む。

「人々の暮らしの質を高めるには、経済活動への市民の民主的な参加が必要」という哲学に基づき、いまや社会的連帯企業はフランス全体のGDPの10%、雇用の10.5%(民間雇用の12.7%)ほどを担う、フランス経済にとって重要な役割を担うものとなっている。

英米型のソーシャルビジネスとは異なり、社会的連帯経済は貧困や格差解決のために、市民や多様なステークホルダーの参画を推進する、民主的なガバナンスであることが特徴だ。こうした市民間の社会的なつながりを重視するパリでは、「ローカル」はひとつの大きなキーワードとなっていた。

パリで社会的インクルージョンを促進するサードプレイスを生み出す社会的連帯企業「Sinny&Ooko」

パリで「心地よい空間」と感じる多くの場所を手掛けているのが、サードプレイスを生み出す社会的連帯企業「Sinny&Ooko(シニーアンドオーコ)」だ。同社の目的は、放棄された都市部を再生し、社会的インクルージョンを促進するサードプレイスをつくること。

今回ツアーでは、その同社が手がけたサードプレイスの一つ、環境配慮方複合施設「La REcyclerie(ラ・ルシクルリ)」を訪れた。
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文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team 写真=Masato Sezawa

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