「脱成長」を掲げる街、パリに学ぶ。広告費ゼロでも大人気のスニーカー?

田中友梨
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第一部:「市民」がつくる、フランスのサーキュラーエコノミーの土台

法整備では他国を牽引するフランス。その成果をつくりあげてきたのは、市民だ。たとえば2021年に可決されたフランスの「気候とレジリエンス法」は、くじ引き型の民主主義とも呼ばれ、ランダムに選ばれた150人の市民からなる市民の気候会議(CCC)が提案した146の提案の結果でもある。

たとえばこの法律では、「2030年までに、全てのフランスのスーパーマーケットは、店舗全体の20%以上を食品の量り売り(バルク販売)のスペースとすること」が義務付けられている。「市民からの提案」だからこそ、その内容は生活に根付いており、変化の大きいものが多いのだ。

欧州一量り売りのお店が多いパリ。その裏側を「Packaging-free Network」に聞く

包装なしで、自分が欲しい量だけを購入できる、量り売りのお店。パリの街を歩くと、そのお店の多さに驚く。

そんなパリの量り売り市場を推進するのが、「Packaging-free Network(パッケージング・フリー・ネットワーク)」だ。同団体は、フランスで広がるゼロウェイストムーブメントの火付け役となった非営利団体「Zéro Waste France」の支援を受け、2016年に設立された。

「包装の廃棄物だけではなく、同時に食品廃棄物も減らしたい」。同団体の理事長を務めるCeliaさんはこう語る。

「商品といえばすでに決められた量があると思い込んでおり、60年以上もの間、私たち消費者は商品の“量”を選んできませんでした。“選ぶ”ことに慣れていない私たちは、どの程度の量が自分に合っているのかもわからないのです。

量り売りは、ガソリンスタンドのように少量だけ買って試すことができたり、予算をコントロールしやすかったり、自分が使いたいものを選んだりすることができます。さらに、消費者が量を選べるので、『もっと買わせよう』といった、マーケティングがないことも魅力です」
Packaging-free Network理事長のCeliaさん

Celiaさんは、量り売りを浸透させるのに必要なことはまず、「市場を構造化すること」だという。つまり、量り売りが普及するためには、それを可能にするためのルール作りや、量り売りの商品を提供する生産者やサプライヤーを見つけるなどの活動が必要不可欠だと言うことだ。

Packaging-free Networkは、実は前述した「気候レジリエンス法」の量り売り設置に関する規則のロビー活動をした団体でもある。

また、小売店の教育として量り売りの見本市を2日間にわたって毎年開催。この見本市では、量り売りで購入ができる生産者やサプライヤーを見つけることができ、市場を発展させる役割を担う。

Packaging-free Networkの参加企業は現在1500社。パリ11区にある量り売りのお店「TOUTBON(トゥボン)」もその一つだ。オーナーは、「お客さんの大半は近所の人。量り売りだから不便という声はなく、ここでの買い物が心地よいと言ってくれます」と話す。
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文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team 写真=Masato Sezawa

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