欧州

2023.10.10 10:30

ウクライナ軍の補給支える鉄道、ロシアの攻撃ものともせず走り続ける

ロシア軍がウクライナ鉄道を攻撃目標にするようになったのは2022年春にさかのぼる。ウクライナ軍が首都キーウに迫るロシア軍の機甲部隊を撃退し、2週間でウクライナを「非武装化」するというロシア側の目標を踏みにじってみせた後のことだ。

ロシアと親ロシア派勢力は以後、ウクライナ鉄道を破壊するという決意を再三新たにしている。直近では3月、ザポリージャ州の親ロ派幹部ウラジーミル・ロゴフが「鉄道は(ウクライナの)体制の部隊移動能力にとってきわめて重要だ」とロシア国営メディアに語っている。

しかし、ロシアのスパイ衛星はウクライナ鉄道の何千、何万という数の列車の動きを確実に追跡することはできない。たとえ、ウクライナ軍の兵士らを大量に輸送するために列車が集結している場合であってもだ。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のリポートによれば、ウクライナ鉄道の列車は2022年3月、ロシアの衛星に気づかれずに1日に3〜4個旅団を移動させていた。

仮にロシア側がウクライナの列車を確実に追跡し、優先的に攻撃できたとしても、ウクライナ空軍はすでに最も重要な鉄道結節点を西側製の新たな防空システムで守っている。

さらに言えば、ロシア側の攻撃がたまたま防空を抜けて着弾し、被害を受けたとしても、ウクライナ側は迅速に復旧させるだろう。キーウ電気車両修理工場は、損傷した線路や橋、機関車、車両を修理するため140%の能力で稼働しているとのことだ。工場責任者のオレフ・ホロバシュチェンコは8月に「昨年は過去最多の車両を修理した」とフォーリン・ポリシーに話している。

つまり、ウクライナの列車は非常に困難な攻撃目標なのだ。機関車1両とその貨物がロシア軍の攻撃に遭ったからといって、ウクライナの鉄道網全体がこれまで以上に大きな危険にさらされるようになったわけではない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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