というのも、ウクライナは部隊や装備の輸送を含めて、輸送を国営ウクライナ鉄道に全面的に頼っているからだ。鉄道への依存度はほとんどの国よりもかなり高いだろう。
ロシア軍がウクライナの列車を計画的に攻撃すれば、ウクライナの戦争努力をまひさせることはできるかもしれない。9月30日かそれ以前にウクライナ南部ザポリージャ市近郊で行われたこの攻撃は、ウクライナ軍の兵站を寸断しようとロシア軍が組織的な行動に乗り出したことを示すものだろうか。
そうではない。この攻撃が目を引いているのは、ロシア軍による新たな対鉄道作戦を意味するからではなく、単にロシア側のドローン(無人機)によって上空から鮮明に撮影されていたからにすぎない。
ロシア軍は実のところ、これまでもずっとウクライナの鉄道を攻撃目標にしてきた。2022年2月24日に戦争を拡大した直後の一時期は鉄道を無視していたが、それは単純に鉄道もすぐに押さえられると思い込んでいたからだ。
ロシア軍は爆弾やロケット弾、巡航ミサイル、ドローンといった手段で、ウクライナの数十両の列車や鉄道駅、車両基地、鉄道橋、交換駅などを攻撃してきた。フォーリン・ポリシー誌によると、ウクライナ鉄道の職員22万人のうち、およそ400人がロシアの攻撃で亡くなっている。
だが、ロシア軍はどんなに攻撃してもウクライナの鉄道網全体を破壊することはできない。なぜならウクライナの鉄道網は広大で耐久力があるからだ。鉄道路線の総延長はおよそ2万4000kmに及び、欧州の国では3番目に長い。そこを2000両の機関車が計9万両の客車や貨車を牽引して走り、1500の駅に乗り入れている。
ロシア側はウクライナに多くの攻撃目標があるが、重要な結節点、とりわけ動く結節点を狙うのに苦慮している。今回の攻撃では重量4トンの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」が使われたとされ、列車の近くに着弾して機関車と、貨車に積まれていた軍用トラック12台の一部が損傷した可能性があるが、この列車が停車中だった点に留意すべきだ。