国内

2023.10.21 11:30

社会人3年目で起業 試行錯誤で「着物から靴」をつくるまで


ミラノではアパレル関係の日本の方に出会いました。その人が、9月にミラノである展示会に出てみないかと声をかけてくれたので、帰国して2カ月ぐらいでけっこうな数を準備をして参加しました。これは絶対にうまくいくと意気込んで行ったのですが、反応がない。結局4日間で売れたのは1足だけでした。考えが甘すぎたんですね。

それで、まずは日本のマーケットでブランドとしての実績を作ろうと動いていたんです。あまり反応はありませんでしたが、大阪の高島屋さんでポップアップを出せることになって。でも、そこでもほとんど売れなくて。そのころには自分がいいと思ったアイデアや商品が世間に否定されているようで涙が出ました。

中道:大変な思いをしてきたのに、話している時の表情は楽しそうですね。

田尻:その時は不安でしたが、今思えば楽しかったです。ドキドキ、ハラハラするけど、やっていてよかったと思う瞬間がうれしくて楽しいんです。今でもそういう感じです。

中道:自分で立ち上げるとそういうスリルがあるからやめられないんですよね。そこから動き出したのは、何かきっかけがあったんですか。

田尻:東京・幡ヶ谷にあった古着屋Caro(現在は山形県天童市へ移転)のオーナーの戸田さんがインスタグラムを見て、サンダルをオーダーしてくださったのがきっかけです。Caroでポップアップもさせていただきました。その時、サンダルを購入してインスタグラムにあげてくださった方がファッション業界で影響力のある方で、そこから露出が増えました。その流れで2019年12月にUNITED TOKYOさんからコラボレーションのお話をいただきました。

中道:現在はどういう状況ですか。

田尻:今6年目で、5周年を機に靴だけでなく、シャツやパンツ、バックとアイテムを増やしています。商品のクオリティやブランドのディレクション力をあげることを目標に取り組んでるところです。ファッション感度の高い方は海外のラグジュアリーブランドを好む傾向がありますが、そこを変えていきたいんです。いろいろな国のブランドが並ぶなかに日本の伝統的なファブリックが使われた商品が並び、それがスタンダードな選択肢になるようにできたらと。

中道:日本は海外にないものがたくさんあるアイデアの宝庫です。海外の人たちが見ているアングルを捉えて、それをどう落とし込むか。その時に、みんなに合わせるのではなく、自分たちはこうだという価値をつくっていくことが重要です。海外のハイブランドは「自分たちはこうなので、それがお好きな人はどうぞ」と、自分たちの価値を守っています。

日本から出るには、そういうところも必要だと思うんです。向こうの人たちは表現もうまい。来年のパリオリンピック・パラリンピックのインスタグラムを見ていてもそう思います。機会があったら見てください。何かのヒントになるかもしれません。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

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