アート

2023.09.30 12:30

目先のことばかり見ていないか? 日本各地で起こる「本末転倒」

二条城 二の丸御殿 台所・御清所でのアーティスト高木由利子の展示(Photo by Kenryou Gu)

二条城 二の丸御殿 台所・御清所でのアーティスト高木由利子の展示(Photo by Kenryou Gu)

日本の企業が世界に出るとき足りないものは何か? そのひとつがコミュニケーション、つまり伝える内容や伝え方だとしたら、どうすれば乗り越えていけるのか?

未開拓の日本の可能性を世界と繋ぐことをミッションとするKitchen & Companyの代表・中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

Vol.53配信のゲストはKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 共同ディレクター 仲西祐介。KYOTOGRAPHIEのミッションは、まだ光があたっていない才能あるアーティストの情報を世界に発信すること。仲西が目指すのは、本当に良いものが認められ、本当に必要な情報が得られる世界だ。



中道:今回はKYOTOGRAPHIE共同代表の仲西祐介さんをお迎えしています。仲西さんは1968年福岡県生まれで、現在は京都在住。ミュージックビデオ、映画、舞台、コンサート、ファッションショー、インテリアなど、さまざまなフィールドで照明演出を手がける照明家です。

2013年に写真家のルシール・レイボーズさんとKYOTOGRAPHIEを立ち上げ、ディレクションを担当。2022年には下鴨神社で行われたヴァン クリーフ&アーペルのエキシビション"LIGHT OF FLOWERS 花と光”のクリエイティブディレクターを手がけられています。

そして2023年のKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭では、ルシールさんとともに、ボーダレスミュージックフェスティバル「KYOTOPHONIE」という新しい挑戦をスタート。まず、照明家の仲西さんが写真祭を始めるところまでを紐解いていければと思います。
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 共同創設者/共同ディレクター 仲西祐介・ルシール・レイボーズ

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 共同創設者/共同ディレクター 仲西祐介・ルシール・レイボーズ


仲西:最初はテレビの演出をしていたのですが、視聴率がどんどん重視されるようになり、そのなかでものづくりをすることに疲れてしまって。そのタイミングで阪神大震災を経験して、そういうことがバカバカしくなり、仕事を辞めて世界中を旅することにしました。

次は何をやろうかと考えていたところに、たまたま照明が足りないということで声をかけられて。照明は初めてでしたがやってみるとだんだんできるようになったんです。食べるためにコマーシャルの照明をしながら、自主制作映画や舞台など、アンダーグラウンドなカルチャーの照明をやっていました。

コマーシャルとアンダーグラウンドという、ふり幅のある中に身を置いているなかで、本当に才能のある人が認められずに、企業とうまく付き合える世渡り上手な人が認められていることに矛盾を感じるようになりました。

そんなときに、今度は東日本大震災が起きたんです。これで大きな価値の変換が起きて、本当に良いものが認められる世界になるのではないかと期待したのですが、意外とそういう変換は起きなくて。それでもう自分たちが才能ある人たちに光を与えるような変換を起こすしかないと。

さらに福島原発事故が起きて。海外メディアがいち早く放射能の危険性を報じているのに、日本のメディアは報道するのがちょっと遅かったことに衝撃を受けて。ああ、人の命より企業の立場を優先するのかと。そういう忖度をするメディアしかないのは本当に危ない。

国とか企業とか個人のへだたりなく、みんなに関わる問題をオープンに話せる新しいメディアを作らないといけない。世界共通のいろいろな問題をみんなで考えていくようなメディアにしたいと思って、アートフェスティバルを立ち上げました。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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