欧州

2023.09.27 12:00

ロシア軍のダミー戦車、ウクライナに再び姿現す

遠藤宗生

戦車と対空ミサイルシステムを模したロシアの膨張式デコイ(Danila2332 / Shutterstock.com)

ロシア陸軍の「膨張式連隊」として有名な第45独立偽装工兵連隊が、再び姿を見せた。ウクライナ南部の戦線で9月25日かそれ以前に、同連隊のものとみられる膨張式のT-72戦車デコイが、ウクライナ軍のドローンにより撮影された

ロシアが仕掛けた対ウクライナ戦争が20カ月目に突入する中、ウクライナのあちこちにデコイを設置しているのは第45連隊だけではない。ウクライナ軍にも、高機動ロケット砲システム(HIMARS)など同盟国から供与された装備を模したデコイや、チェコ企業が製造しているM1エイブラムス戦車のダミーなどを有するデコイ部隊がある。

これらのデコイの目的は明白だ。敵の注意を引きつけてドローンや砲撃で攻撃させ、高価な砲弾やミサイルを安価なデコイに使わせることができる。デコイの値段は1万ドル(約150万円)程度なのに対し、ウクライナ軍のGPS誘導砲弾エクスカリバーは7万ドル(約1040万円)もする。

第45連隊は、1980年に創設されて後にアフガニスタンで戦った第45工兵・土木工兵連隊の流れをくんでいる。モスクワ東部のウラジーミル州を拠点とする同連隊は2006年にデコイの展開を任務として課されたが、その後すぐに解散した。

ロシアは2017年に同連隊を再編成し、スホーイ戦闘機やS-300防空ミサイルシステムの砲台、T-72戦車などロシア軍の主力兵器を真似たデコイを与えた。

第45連隊の工兵は、空気が抜かれたデコイを見せかけの遺体袋に詰め込み、カマズ社製のトラックに乗る。ロシア紙イズベスチヤによると、「数分で」デコイを膨らませることができる。

十分な訓練を受けたドローン操縦士は、細部の欠如や、砲身などのたるんだ部分を支える棒が落とす影からデコイを判別できる。夜間であれば、本物の車両が出す特徴的な熱を探すことでデコイと本物を見分けることもできる。また、電子戦のスペシャリストは、電磁波の放射でデコイと本物を見分けることができる。

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翻訳=溝口慈子

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