米オンライン科学誌「PLOS ONE」(プロス ワン)に発表された論文によると、研究チームは米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立老化研究所(NIA)と提携する全米37カ所のアルツハイマー病研究センター(ADRC)から収集したデータを分析。当初は婚姻または内縁関係にあったが後に離婚・離別した263組のカップルに加え、対照群として同じ年齢グループの1238組を対象に調査を行った。
研究チームは「一部のカップルにとって、離婚は有益なものとなる。一方による虐待があった場合には、別れることは安全面の問題でもある。だが、一般的に離婚は精神的、経済的なウェルビーイングに多大な悪影響を及ぼすものであり、特に高齢の女性にとっては影響が大きい」と述べている。
調査対象とした認知症患者に最も一般的にみられたのは、易刺激性(ささいなことで不機嫌になる)、不安、うつ状態だった。
研究チームは、パートナーの負担が非常に大きい認知症は、その他の疾患以上に対人関係を損ない得るものだと指摘。「認知機能障害を伴わない疾患ではしばしば、疾患のある配偶者が、慢性または進行性の症状がある間も、もう片方の配偶者を感情面でサポートする能力を維持できる。だが、認知症については、そうはならない場合も多い」と述べている。
さらに、後期認知症によって離婚の可能性がむしろ低くなった理由について、「後期認知症患者の配偶者は、難しい行動は疾患によるものと解釈できる一方、症状がそこまで進行していない患者の場合、配偶者はそうした行動を意図的なものと捉えてしまうかもしれない。そのため、関係に悪影響が及ぶのだと考えられる」と考察している。