食&酒

2023.09.28 09:15

ソムリエ日本一決定戦、難問「標高順に並べる」など熾烈な戦いを目撃

中村選手を囲んで、WOSA Japanプロジェクトマネージャー高橋佳子氏と筆者

決勝戦の課題は?


決勝戦の課題は5つ。
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課題1:3名テーブルの接客

女性客がカクテル(オールドファッション)をオーダーし、男性2名がビール(IPA)、ワイン(ペットナット)をオーダーする。アシスタントソムリエ1名を使ってよい(3分)。

課題2:ワインリストの間違い探し

アシスタントソムリエが準備したワインと、グラスワインリストに間違いがないか指摘する(2分)。

課題3:大切なゲスト(夫婦)を招いて6名でのディナーへの接客

「1998年のボルドーの赤ワインを頼んだのでデキャンタしてほしい。その前にボトルシャンパーニュで乾杯したい」とオーダーされる。アシスタントソムリエ1名を使ってよい(10分)。
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課題4:ブラインドテイスティング

ワゴン上には4つの赤ワインが並んでいる。うち1つを3分間でフルコメント(3分)。ワインの官能表現(外観、香り、味わい)、ワインの特定(国、品種、ヴィンテージ)、提供方法、合わせる料理などを述べる/3種類の赤ワインの比較テイスティング(3分)と、それを標高順に並べる(1分)

課題5:シェフとのペアリングメニューの相談

ブラインドで供されたロゼワインをテイスティングし、シェフとそれに合う料理について相談する(3分)

コンクールをナビゲートしたのは、現世界チャンピオンであるラトビア出身のレイモン・トムソン氏。

コンクールをナビゲートしたのは、現世界チャンピオンであるラトビア出身のレイモンズ・トムソンズ氏。


語学力は必須


職種や職域レベルによってはビジネスの世界にも共通することだが、そもそもの前提として必須となるのが語学力である。世界大会を見据えた本大会は、すべての課題は母国語以外の外国語(今回の決勝では全員が英語を選択)で実施する。出題者からの課題の読み上げも、接客も、ブラインドテイスティングでのコメントもすべて外国語で行うのだ。言葉に詰まったり話すスピードが遅かったりすれば、短い制限時間内で課題をこなせず不利になる。世界で戦うには非常に高い語学力が必要とされるため、選手たちはコンクールに向け英語のトレーナーをつけ、研鑽を積んで試合に臨む。

課題4、コンクールの定番であるブラインドテイスティングでは、皆相当な練習を積んでいるのだろう、開始の合図とともに英語で流れるようにコメントを披露していた。特にホー選手のマシンガントークぶりは圧巻だった。



苦戦が見られたのは、3種の赤ワインの比較テイスティングの後、1分間で標高順に並べる課題だ。今回出題された3種類はすべてナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン。一口にナパ・ヴァレーといっても標高の低い谷側と山側など、産地は多岐にわたる。ワイン産地を立体的なイメージでとらえ、果実のキャラクターや酸、タンニンの質などからその特徴を導き出せるか、非常に高度なテイスティング能力を問う課題だ。優勝した野坂選手は、「elevation」の意味を取り違えてしまったのであろう、3つのワインがどれだけ熟成するかについて説明。優勝という結果を鑑みると、ここでの失点はそこまで大きくなかったのだろうが……。
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文=水上彩 編集=石井節子

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