食&酒

2023.09.28 09:15

ソムリエ日本一決定戦、難問「標高順に並べる」など熾烈な戦いを目撃

中村選手を囲んで、WOSA Japanプロジェクトマネージャー高橋佳子氏と筆者

このテイスティングをカベルネ比較と推定できたのは中村選手とホー選手。標高順まで言い当てたのはホー選手のみだった。ソムリエというと、「ワインを言い当てる人」というイメージがあるかもしれないが、実際に品種や産地、ヴィンテージ等まで言い当てるのは並大抵のことではないことがわかるだろう。
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世界最優秀コンクール5位に輝いたトップソムリエが助手役、「使えない……」に笑いが


今回勝敗を分けるキーポイントになったのはチームワーク、すなわち実技審査で使うことを許されたアシスタントソムリエ1名をどう有効活用するかだ。まさにここも、ビジネスシーンと共通するポイントだろう。

そのスタッフ役を務めたのは2023年2月の世界最優秀コンクールで5位に輝いたトップソムリエ岩田渉氏。レイモンズ氏が「ワタルを使っていい」と指示を伝えると、「あの岩田渉がアシスタント役」というギャップに、会場から笑いが起こった。ただしポイントは、このアシスタントにできることが限られている点。最初の3分の実技審査で、選手たちが岩田氏に「カクテル(オールドファッション)は作れますか」と確認すると、岩田氏は、「僕はグラスを置くことと飲み物をサービスすることしかできません」と回答。野坂氏が「ビールを開けてくれますか?」と聞くと、「ボトルは開けられません」と返す岩田氏に、「使えない……!」とまた会場に忍び笑いが起こった。

この助手の使い方の差が如実に表れたのが、コンクールの目玉ともいえる10分間の長い実技審査だ。素晴らしいチームワークを見せたのが、優勝者の野坂選手。乾杯用のシャンパーニュグラスを置く作業、シャンパーニュを注ぐ作業、さらには水のサービスやワゴンの片づけまで岩田氏に割り振った。さらに感銘を受けたのが、その指示の仕方の的確さだ。
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野坂選手はまずメインゲストが誰かを伝え、「まずメインゲストから、その後はレディ・ファーストで」とサービスの順番を指示。自分にしかできないことと人に任せられることを瞬時に判断し、的確に割り振るさまは見事だった。一方、ホー選手は、グラスを置く作業からサービスまで自ら行い、悔しくもデキャンタージュの途中でタイムアップ。アシスタント役の岩田氏がずっと棒立ちだったのが気になった。流ちょうな英語による慣れた受け答え、落ち着いた接客、足音も静かなスマートなサービスだっただけに惜しいと感じた。

ハプニング勃発 臨機応変な対応力も必要


「突発的なハプニングにどう対処するか」はビジネスでも重要なポイントになり得るだろうが、こうした実技審査では、必ず何かハプニングが起こるのがコンクールの定番だ。例えば過去には、グラスやデキャンタが汚れていたり、匂いがついていたり、ボトルが冷やされていなかったり、様々な「トラップ」が仕掛けられていた。本大会ではあからさまなトラップこそなかったものの、やはり「ハプニング」は容易されていた。
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文=水上彩 編集=石井節子

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