心を掴む雑談力
コンクールでは厳しい制限時間のなかで課題を終わらせるというミッションのため、せわしないサービスになってしまうのは止むを得ない。それでも必要最低限の会話以外に雑談やジョークを織り交ぜるなど、余裕と笑いのある接客は「この人のサービスを受けたい」と思わせ、一観客から見ると好感度が高い。その点で輝いていたのが森本美雪選手。シャンパーニュのサービスの前には、「今日は特別な会食なのですか?」とホストに話しかけ、突然の女性2名の来客には「お二人はシャンパーニュがお好きでしょうから、ルイロデレールをご用意しました。もう一種類イギリスのスパークリングワインもご用意がございますので、ご入用でしたら仰ってくださいね」と慣れた対応。審査員を務めた女性は筆者の知人だったのだが、事実無類のシャンパーニュ好きであるため、本人たちもにっこり。その後もジョークを飛ばし、“美雪スマイル”で会場の心を掴んでいた。
おもてなしもチーム戦
すべての課題でバランスよく安定したパフォーマンスを見せ悲願の優勝を果たした野坂選手。さらに特筆すべきは、チームでの活躍だ。マンダリンオリエンタルホテル東京からは、野坂選手を含め若手ソムリエの池田大輝・山本麻衣花選手も出場し、3名全員が準決勝に進出した。また、2位の森本美雪選手が所属するコンラッド東京は、世界大会を何度も経験した森覚氏がソムリエチームを育ててきた。初出場ながら3位に食い込んだ中村選手のメンターは前大会優勝者の井黒卓氏で、ロオジエにも優秀な若手が集まる。先輩が師となり後進を育て、切磋琢磨しながらチーム全体の底力を上げることが、一流のサービスパーソンには不可欠なのである。
水上彩(みずかみ・あや)◎ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身。『日本ワイン紀行』ライターとして日本全国のワイナリーを取材するなど、ワイン専門誌や諸メディア等へ執筆。WOSA Japan(南アフリカワイン協会)のメディアマーケティング担当として、南アフリカワインのPRにも力を注ぐ。J.S.A認定ワインエキスパート。ワインの国際資格WSET最上位のLevel 4 Diploma取得。