経営・戦略

2023.09.06 07:30

ポケモン宇都宮COOに聞く、Pokemon GOからの8年と世界戦略

——社会性を持った取り組みで、具体的に進めているものはありますか。

2018年にスタートしたのが、「ポケふた」です。ポケモンと地域の景観などがデザインされた世界で1枚しかないオリジナルデザインのマンホール蓋を、地方自治体に寄贈し観光資源として活用していただくというものです。これまで300箇所以上に設置していただきました。

また、コロナ禍の2021年6月からは、ダメージを受けた航空業界や観光業界に貢献しようと「そらとぶピカチュウプロジェクト」をスタートしました。スカイマークや全日空ほか、国内外の航空会社との協業で、機体にポケモンたちがデザインされた飛行機「ピカチュウジェット」や「イーブイジェット」の運行をするなど、期間限定の取り組みを行っています。

さらに、同年7月からは全国の博物館で、巡回展「ポケモン化石博物館」を実施しています。カセキから復元されるポケモン(カセキポケモン)と、地球で発掘された「化石・古生物」を見比べることで、古生物学について学べる展示です。

我々は、「ポケモンでしかできないことを」「ポケモンらしく」という軸を持ちつつ、おもしろくて、かつ社会的意義もある取り組みには積極的に参加したいと考えています。

——今年7月には睡眠ゲームアプリ「Pokémon Sleep」をリリースし、”睡眠のエンターテインメント化”にも挑戦されています。構想の背景は。

「Pokémon GO」の影響が大きいです。「Pokémon GO」を開発した米Niantic社の創業者、ジョン・ハンケさんは「テクノロジーの力で人が外の世界に出るように促し、人々の歩く歩数を増やしていきたい」という想いをお持ちでした。そして位置情報をゲームに取り入れたゲーム「Ingress」を開発し、そのデータを活用して「Pokémon GO」が生まれました。

このゲームによって、実際に人が外に出る機会は増えたと思いますし、歩くことで健康になった人、新しい出会いを得た人もいます。「Pokémon GO」を通して、人の日常生活に寄り添えるゲームは面白いなと思っていたことが背景にあります。

日本人はみんな睡眠不足気味と言われていますし、いわゆる“寝ない自慢”もしますよね。寝ることをポジティブに変えられないだろうか、というのが「Pokémon Sleep」の着想のきっかけです。睡眠学の世界的権威である柳沢正史先生(S’UIMIN代表取締役社長)との出会いもあり、形にすることができました。

ただ、睡眠とゲームは相性が悪いんです。「寝る」「起きる」という2アクションしかないので、ゲーム性を付与しにくい。ゲームとして楽しんでいただけるように、アイデア着想からリリースまで5年ほどを要しました。
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文=堤美佳子 編集=田中友梨

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