最近、そのように言っていただくことが多いのですが、それもここ5年ぐらいの話なんです。この間まで、「ポケモンは小学生までだよね」「大人になってもポケモン好きって恥ずかしい」という認識があったように思います。
私は過去にポケモン関連商品のオフィシャルショップ「ポケモンセンタートウキョー」(現在の名称は「ポケモンセンタートウキョーDX」)の統括をしていたのですが、外出着よりも部屋着のほうが売れるんです。つまり、他人には見られたくないけれど、ポケモンを身に着けたいということ。同様に、カバンの中に入れて使うポーチもよく売れていました。「隠れファン」が多かったんですね。
それが、2018年ごろから風向きが変わりました。なぜなのかは僕もあまり言語化できてないのですが、同年にスタートした藤原ヒロシさん率いる「FRAGMENT」との合同プロジェクト「THUNDERBOLT PROJECT」など、様々なライセンスの取り組みを通じて、イメージが変わってきたのかもしれません。
ようやく「隠れファン」がファンと公言できるような雰囲気になり、今の20代の方たちも、同世代に「ポケモンが好き」と言うときに恥ずかしさはなくなってきたんじゃないかなと。近ごろはポケモンセンターで、大人の姿もよく見かけます。
ポケモンが末永く愛されるには?
——宇都宮さんは、米Niantic社とともに、ポケモン社側から2016年リリースのスマホゲームアプリ「Pokémon GO」プロジェクトを主導しました。「Pokémon GO」への挑戦は、ポケモン社にどんな意味をもたらしましたか。ひとつは、世界的にブームとなったことで収益として大きい柱になったこと。会社の規模が大きくなりました。ただ、同時にネガティブな側面もあり、立ち止まるきっかけにもなりました。
実際に街を歩きながらポケモンを集めていくゲームなので、「歩きスマホ問題」を始めとする様々な問題が起きてしまい、私も省庁や警察に呼ばれて説明することがあったんです。社会現象となったこともあり、世間から「ポケモンは世の中にとって良い存在であろうとしているのか、それともお金稼ぎのためなのか」という、疑いの目を向けられているように感じました。
もちろん、当社は「ポケモンが末永く愛されること」をミッションとして掲げていて、ポケモンは“良い存在”でありたい。そこで、「ポケモンがいる(ある)ことで、世の中も良くなっている」と多くの人に感じてもらうことが、最終的にはポケモンが次の時代まで残っていくことにつながるんだと気付きました。そこから、社会性を持った取り組みにも、もっと積極的に挑戦しようと考えました。
「Pokémon GO」は、その後さまざまなアップデートを重ね、リリースから7年を迎えた今でも多くのプレイヤーの皆さまに楽しんでいただけています。