尾上菊之助が手がける「FFX」歌舞伎 海外ファンの心もつかむ

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』を企画した尾上菊之助

2001年に発売され、国内外で多くのゲーマーを虜にしたファイナルファンタジーX(FFX)。続編を含め世界累計出荷・DL販売本数は、2110万本以上(2022年3月末時点)と、シリーズ屈指の人気作だ。

歌舞伎俳優・尾上菊之助さんも、本作のファンのひとりだ。コロナ禍のステイホーム期間中に再度FFXをプレイしたことをきっかけに、『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』を企画した。

観客席が360度回転する劇場「IHIステージアラウンド東京」にて、3月4日から開幕した同作は、前編(3時間35分)後編(3時間25分)を合わせて上演時間7時間(途中休憩あり)という超大作だ。

企画、演出、主人公のティーダ役を務める菊之助さんは、本作を国内だけでなく海外のFFファンにも届けたいという。その熱い思いを聞いた。


なぜ今「FFX」で歌舞伎なのか

──菊之助さんはこれまでに「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」(2017年)、「風の谷のナウシカ」(2019年)などの新作歌舞伎を手掛けてきました。今回、FFXというゲーム作品を扱おうと考えたのはなぜでしょうか。

2020年にコロナ禍に突入したことが、大きなきっかけです。歌舞伎は4月から夏頃まで休演になってしまい、その間私もずっとステイホームをしていました。

家にいる間、家族と一緒に「もう一度ゲームでもしてみようかな」なんて話をしました。元々ゲームが好きだったんですけど、30代40代は忙しいこともありしばらく離れていたのもあって。その時「そういえばゲームで一番記憶に残っているのって、FFXだな」とふと思い出しました。

FFXはPlayStation 2専用ソフトで、シリーズでは初めてキャラクターボイスが採用された作品でした。本当に映画を見ているような感覚で、感動したんです。懐かしくなって、もう一回プレイし始めしました。

そうしたら、この作品で描かれている世界観が、今の時代にぴったりとはまったように感じたんです。コロナ禍で先行きが見えなくて不安になったり、気分が落ち込んだりしている人々が、前向きになれるようなメッセージが込められているなと。

コロナ禍で「自分だからこそできることは何か」を考えるなかで、今まで様々な新作歌舞伎をつくってきた経験とFFXとが繋がり、新作歌舞伎をつくろうと考えました。

すぐに権利元のスクウェア・エニックスにビデオレターと企画書を送り、新作歌舞伎の実現へと至りました。


尾上菊之助が演じるティーダ
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文=田中友梨 写真=山田大輔

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