気候・環境

2023.08.26 14:00

みんな「自然が大好き」というわけではない、遺伝と幼少期の経験が影響

ニューヨーク、セントラルパークのギャップストウ橋(spurekar via Wikipedia cc-by-2.0)

自然への愛は個人差が大きいため、都市や緑地を計画する際には、それを考慮に入れるべきだと科学者らはいう。

自然は好きですか? もちろん私は大好きだ。しかし、この愛が必ずしも誰にでも当てはまるものではないと知って私は驚いた。なぜか? 私たちの自然に対する愛、専門家が「バイオフィリア」と呼ぶものはどこから来るのだろうか? バイオフィリアは生まれつきのものなのか、子ども時代の経験によるものなのか。自然がもたらす結果なのか、育てられるものなのか、あるいはその両方なのか?

ドイツの精神分析学者 エーリヒ・フロムは「人生および生きているものすべてに対する情熱的な愛」を説明するために「バイオフィリア(生命愛)」という用語を作った。エドワード・オズボーン・ウィルソンが提唱した「バイオフィリア仮説」は、人間には自然やさまざまな形の生命とのつながりを求める生まれながらの欲求があり、その欲求には(少なくとも部分的に)遺伝学的根拠があることを示唆している。

自然の中にいることが、人間のメンタルヘルスや生活満足感に好ましい効果があることはよく知られているが、なぜそうであるかは論争がある。人間が自然に魅せられるのは当然であり、それは人間が自然の中で進化したからだと複数の専門家が考えている。しかし、バイオフィリアに影響をおよぼす遺伝子はまだ特定されておらず、さらには、人類がテクノロジーに依存するようになったことが、自然とつながろうとする欲求を短絡化しているとも考えられている。別の専門家らは、幼少期の経験が、私たちの自然に対する認識や愛情の背景にある根本的な理由であると主張している。

スウェーデンの科学者からなるチームが、この議論を探究するべく結成された。彼らは、この分野で過去に発表された研究の中から、先天的要因および主に子ども時代の経験した個人的要因の両方を分析した例を検討した。調査結果に基づき、人間の自然に対する愛は、遺伝および体験、特に幼少期の体験の組み合わせに基づくものであり、また極めて個別的であるとチームは主張している。

「私たちは、多くの人々が自然に関わる無意識の肯定的体験を持っていることを明らかにしました」と論文の主著者で、ヨーテボリ大学生物環境科学科名誉教授のベンクト・グンナルソンは声明で語った。「しかし、バイオフィリア仮説は、個人の自然との関わりの多様性を、遺伝と環境の影響との相互作用に結びつけるよう修正する必要があります」
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翻訳=高橋信夫

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