気候・環境

2023.08.26 14:00

みんな「自然が大好き」というわけではない、遺伝と幼少期の経験が影響

ニューヨーク、セントラルパークのギャップストウ橋(spurekar via Wikipedia cc-by-2.0)

要約すると、人は独自の方法と理由に応じて自然を経験し反応する。ある日本の研究では、被験者が森の中と市街地を歩いている時の心拍数を測定、分析した。その結果、森の中では被験者の65%が心拍数の減少(肯定的感情を表す)を示し、森の中を歩くことを誰もが喜んでいるのではないことを明らかに示した。同じチームが実施した別の実験では、都市よりも自然の景観に関心をもつ個人の感覚は、自然に満ちた幼少期を経験した個人の場合に高くなることが示された。
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そして、双生児を対象に、遺伝的影響に特化した観察、分析を行った研究がある。

「二卵性および一卵性双生児に関する追加研究は、遺伝的要素が個人の自然に対する否定的あるいは肯定的関係に影響を与えていることを示しました」とグンナルソンは話した。「その研究は、自然に対する態度に関わる環境の重要性も強調しています」

チームはさらに、自然とは何かという認識が人によって大きく異なることを発見した。 自然を手入れされた公園や芝生や花や木々でいっぱいの緑地のように認識する人もいれば、より体験的に、手つかずの自然の中で過ごす方が満足感を得られると考えている人もいる。こうした最高の自然を体験するさまざまな方法もまた、遺伝と幼少体験によって決まる可能性がある。
図1:都市の緑地。管理されていない森林(左)、手入れされた自然(右)。いずれもスウェーデン、ヨーテボリ植物園の一部(Bengt Gunnarsson、DOI:10.1016/J.TREE.2023.06.002)都市の緑地。管理されていない森林(左)、手入れされた自然(右)。いずれもスウェーデン、ヨーテボリ植物園の一部(Bengt Gunnarsson、DOI:10.1016/J.TREE.2023.06.002)

「町や市の緑化を計画する際は、自然を標準化しないことが大切です」と共著者であるスウェーデン農業科学大学造園学科教授のマーカス・ヘッドブロムは考える。「野生の緑を公園で置き換えて、それがすべての人々にとってよいことだと考えるべきではありません」
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誰もが自然の中で過ごすことの恩恵を得られるために、都市緑地の設計と土地計画は、人々の好みの相違を反映するべきだ。

「相当数の人々が自然に対する肯定的感情を持っていないと考えられます。その理由の一部は遺伝的要因によるものです」とグンナルソンがまとめた。「個人の自然との関係を何が形成するかを理解するためには、遺伝と環境要因の相互作用に関するさらなる研究が不可欠です。しかし、人はみな違うということを忘れてはならず、町や市の自然地域を設計する時は、それを考慮に入れなくてはいけません。それぞれの人に好きな緑地を見つけさせることです」

出典:Bengt Gunnarsson and Marcus Hedblom (2023). Biophilia revisited: nature versus nurture, Trends in Ecology and Evolution 38(9):792-794 | doi:10.1016/j.tree.2023.06.002

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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