LK-99が爆発的な関心を呼んだ理由
米カリフォルニア大学デービス校の物理学者インナ・ビシクによると、超伝導体を発見したという主張がネット上で広まったのは今回が初めてではなく、こうした情報は「2、3年ごとに現れる」という。では、LK-99がこれほど大きな話題を呼んだのはなぜなのか? ビシクによれば、その理由の1つは、製造方法が非常に簡単だったことにある。材料は一般的な研究室に常備されているものが多く、製法が「比較的、低コストでローテク」だったことが、爆発的な関心を呼んだ要因かもしれないという。
米国立強磁場研究所の主任材料科学者デービッド・ラーバレスティアは、もう1つの要因として、論文が明らかな虚偽や間違いではなかったことを指摘している。「あるグループが発見した。それが何であるかを完全に理解していたわけではなかったのは明らかだが、楽観的な見方をして、人々がそれを検証し判断できるように、証拠をきちんと提示した」
さらに、ある物質が超伝導体になれるかどうかを確認する良い方法が確立されていないことも一因となった。プリンストン大学のレスリー・ショープ教授(化学)は「超伝導体の予測は非常に難しい」と語る。ショープの研究室はLK-99を再現したが、超伝導性は確認できなかった。「超伝導体は、時として予想外のところから現れる」
検証実験が話題を呼んだことも、科学者たちの興味を煽った。ショープは最初に論文を読んだ際、LK-99が超伝導物質だとは思わなかったが「多くの人からメッセージをもらったので、自分もやらなければと思った」
ショープに加え、インドのCSIR国立物理研究所、中国の北京物性物理国立研究センターの検証結果からは、LK-99は表面的には興味深い磁気特性を示し、一部のサンプルでは電気抵抗の減少もみられたものの、超伝導体としての特性は持っていない可能性が高いことが示されている。さらに、マックス・プランク固体研究所が先週発表した詳細分析の結果では、超伝導にみえる特性を生み出したのは、LK-99の製造法によって銅が持つ既知の性質が引き出されたことが要因だったことが示された。
ビシクは「これが超伝導への道だとは思わないが、興味深いものがある」と指摘。フォーブスの取材に応じた他の科学者の多くも、同様の感触を語った。
LK-99が話題を呼んだことには、良い効果もあった。この分野に興味を持つ人が増えたのだ。
ローレンス・バークレー国立研究所の物理学者シニード・グリフィンは、LK-99の特性の一部をコンピュータシミュレーションした結果をXに投稿し、話題を呼んだ。「高校生からすでにいくつも質問メールが届いており、それを見ることをとても楽しんでいる」という。
(forbes.com 原文)